経営者に素早い判断を促したくても、なかなか動いてもらえない場面は少なくありません。ビジネス環境が急速に変化する昨今、意思決定の遅さは企業にとって致命傷になる場合があります。
メリットと危機感を言語化すれば、新しい取り組みに腰が重い経営者を動かすことが可能です。新しいチャレンジはチームの成長を促し、提案者の評価も上がります。
本記事では、新しい取り組みに腰が重い経営者を動かす効果的な方法を紹介。メリットと危機感を適切に言語化することで、経営者の背中を押し行動に促します。
経営者を動かすための実践的なコミュニケーション戦略も身につけることで、組織全体への影響力を上げることが可能です。
経営者が躊躇する理由は変化への恐怖と現状維持バイアス
多くの経営者が新しい取り組みに躊躇する理由には、変化を恐れる心理と現状維持バイアスが関係しています。変化を恐れるのが人間の本能です。経営者の場合、人生の成功体験が強固な壁となり、新しいチャレンジを躊躇させています。
現状維持バイアスは、今の状態に留まろうとする人間心理を言います。「今のままでも何とかなっている」という思考が、新たな挑戦を妨げています。しかし、ビジネス環境が急速に変化する昨今、チャレンジを避けることは成長を放棄することと同義です。
経営者を動かすには価値を明確に言語化する必要がある
経営者を動かすには、新しい取り組みがもたらす価値を明確に言語化する必要があります。価値の言語化の手順は以下のとおりです。
- 具体的な数字で示す
- ビフォーアフターを明確に伝える
- 競合他社との差別化ポイントを提示する
価値の言語化1. 具体的な数字で示す成果
「施策を導入で売上が20%増加し、利益率が5ポイント改善します」というように、具体的な数字を用いて成果を示してください。抽象的な表現では経営者の心は動きません。
価値の言語化2. ビフォーアフターの明確化
「導入前は月間100件だった問い合わせが、導入後は300件に増加しました」など、明確に数字を伝えます。ビフォーアフターを明確に示すことで、変化の大きさを実感させられます。
価値の言語化3. 競合他社との差別化ポイント
「取り組みにより、業界内で唯一のサービスを提供できるようになります」といった形でポイントを説明。競合他社との明確な違いを示すことが効果的です。
行動しないリスクの言語化で危機感を伝える
メリットを示すだけでなく、行動しないことのリスクも具体的に言語化する必要があります。危機感の言語化の手順は以下のとおりです。
- 業界の変化と取り残されるリスク
- 具体的な損失の可能性
- 成功事例と失敗事例の対比
危機感の言語化1. 業界の変化と取り残されるリスク
「今後5年以内に、AIを活用したサービスが業界標準になると予測されています。導入が遅れると、市場シェアの30%を失う可能性があります」というように、業界の変化に乗り遅れるリスクを具体的に提示してください。
危機感の言語化2. 具体的な損失の可能性
「施策を導入しない場合、年間1億円の機会損失が発生すると試算されています」など、行動しないことによる具体的な損失額を示すことで、危機感を高められます。
危機感の言語化3. 成功事例と失敗事例の対比
「同業他社のA社は早期に導入し売上を倍増させました。一方B社は、導入を見送り市場シェアを半減させました」といった形で、具体的な事例を対比させることで、行動の重要性を強調できます。
効果的な言語化の4ステップ
メリットと危機感を効果的に言語化するには、以下の4ステップを踏むことが重要です。
- 目的の明確化
- 重要項目の洗い出し
- 各項目の定義づけ
- 具体例への当てはめ
ステップ1. 目的の明確化
何のために新しい取り組みするのかを明確にします。「売上増加」「業務効率化」など、具体的な目的を定めます。
ステップ2. 重要項目の洗い出し
目的達成のために必要な項目の洗い出しが必要です。「顧客満足度向上」「コスト削減」「リピート率向上」などです。
ステップ3. 各項目の定義づけ
洗い出した項目それぞれを具体的に定義します。「顧客満足度とは、アンケートでの5段階評価で4以上の割合」といった形に整えましょう。
ステップ4. 具体例への当てはめ
定義した項目を具体的な事例に当てはめてください。「A社では、この施策導入後、顧客満足度が60%から85%に向上しました」というように示します。
言語化のテクニック
効果的な言語化には重要なテクニックがあります。最初に以下の5つの要素を押さえてください。
- 価値
- 差別化
- 信頼性
- 価値提供プロセス
- アクション
次にストーリーテリングを活用します。具体的な事例を交えることで、経営者の共感を得やすくなります。最後にグラフや図表などのビジュアルを効果的に使用してください。複雑な情報をわかりやすく伝え、理解度と説得力を向上させます。
テクニックを適切に組み合わせることで、経営者への提案をより印象的で説得力を持ったものにできます。
経営者を動かすには良い関係づくりから
経営者を動かすためのコミュニケーション戦略は、共感から始めることが重要です。経営者の現状認識や課題感をしっかりと聞き、経営者の立場に立って考えることから始めてください。「確かに、その課題は重要ですね」といった言葉で共感を示すことで、経営者との信頼関係を築けます。
質問を活用して経営者の自発的な気づきを促すことも効果的です。「今の状態が続くと、5年後にはどうなっていると思われますか?」といった感情を引き出す質問が効果的です。経営者自身に現状の問題点や将来のリスクを認識してもらえます。
自ら気づいた課題は、他人に指摘されたものよりも強く印象に残り、行動に移してもらいやすくなります。
すかさず「まずは3ヶ月間のトライアルから始めましょう」といった形で、すぐに実行可能で負担の少ない提案をしてください。経営者の決断のハードルを下げられます。
まとめ:言語化の力で経営者の背中を押す
新しい取り組みに躊躇する経営者を動かすには、メリットと危機感の言語化が重要です。具体的な数字や事例を用いて、変化の価値とリスクを明確に示しましょう。
経営者には共感から始め、自発的な気づきを促し、具体的なアクションプランを提示することが効果的です。提案後も継続的なフォローアップを忘れずに行いましょう。
言語化の手法を活用することで組織の変革と成長を促進し、変化の激しいビジネス環境での競争力を高められます。適切な言語化が経営者の背中を押し、新たな挑戦への扉を開く鍵となります。
この記事を書いた人
木暮太一
慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。
1万部売れればヒットといわれる業界で、平均7万部(直近2年)の実績を誇る「連続ベストセラー作家」。
出版社を10年経営しながら得た出版ノウハウは「業界No1」と圧倒的な評価を得ており、プロデュースした著者の書籍は2000冊を超えている。
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