「言った言わない」が起きる組織の本当の問題点

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こんにちは、木暮太一です。

突然ですが、会社の打ち合わせ後、あなたはこんな経験はありませんか?
「前回の打ち合わせでその件、確認しましたよね?」
「いえ、聞いていません」
「えっ、でも確かにお伝えしたはずですが……」

お互いが真剣に仕事をしているのに、なぜかこういった「言った言わない」問題が起きてしまう。メールで確認したり、議事録を取ったりしても、完全には解決しない。

じつはこの問題、記録の取り方や確認方法ではなく、もっと根本的な部分に原因があります。今回は「言った言わない」が起きる本当の理由と、現場ですぐに実践できる解決方法をお伝えします。

こんな会話ありませんか?


「部長から聞いてないんですけど……」
「確かにお伝えしましたよね?」
「いや、そんな話は……」

組織の中でよく聞く会話です。誰かが「言った」と主張し、誰かが「聞いていない」と答える。こういった「言った言わない」問題で、どれだけの時間とエネルギーが無駄になっているでしょうか。

◆「言った言わない」は記録の問題ではない

この問題の対策として、「議事録をしっかりとる」「メールで確認を取る」などが提案されます。たしかにその通りです。ただ、それで本当に解決するでしょうか?

ぼくが過去に経験した失敗を紹介します。

以前、あるプロジェクトでメンバーに指示を出したことがありました。その時は確実に伝わるようにと、わざわざメールで送信しました。しかもCCには上司も入れて、組織として共有された形を取りました。

しかし後日、そのメンバーは全く違う方向で作業を進めていました。「メールで確認したはずでは?」と聞くと、「はい、見ました。ただ……」と歯切れの悪い返事を返してきます。話を聞くと、メールは見たものの、その指示の意図がわからなかったそうです。
メールで送った=伝えた、というのは大きな誤解でした。記録に残っていても、それは「発信した」という証明でしかありません。

◆「言った言わない」の本当の原因

では、なぜ「言った言わない」が起こるのでしょうか?

結論から言えば、それは「伝えた内容が言語化されていない」からです。言葉で表現はしているものの、その内容が明確になっていないんです。たとえば、「もう少し丁寧に作業してください」という指示があります。一見、明確に伝えているように見えますね。しかし、この「丁寧」とは具体的に何を指しているのでしょうか?

・時間をかけること?
・チェック項目を増やすこと?
・見た目を整えること?

それがわかりません。人によって「丁寧」の定義は違います。相手の「丁寧」と、あなたの「丁寧」は一致していない可能性が高いんです。

◆解決策は「3つの明確化」

「言った言わない」をなくすために必要なのは、以下の3つの明確化です。

1.目的の明確化

まず、なぜその指示を出すのかを明確にします。
「商品写真を撮り直してください」ではなく、「お客様がより商品の質感を実感できるように、商品写真を撮り直してください」と伝えます。
目的が明確になれば、相手は自分で考えて行動できます。撮影アングルや明るさなど、自分で判断できるようになるんです。

2.完了条件の明確化

次に、いつ終わったと言えるのかを明確にします。
「企画書を作成して」という指示ではなく、「来週の部長会議で使える企画書を作成して」と伝えます。さらに「部長会議では●●について決定する必要があるので、その判断材料となるデータを盛り込んでください」と補足できればベストです。

3.タイミングの明確化

最後に、いつまでに必要かを明確にします。単に「急いでください」ではなく、「明日の午前中までに必要です。なぜなら午後から●●があるためです」と伝えます。

◆すぐにできる実践方法

ここまで読んで「そうは言っても、毎回そんな丁寧に伝えていられない」と感じる方もいるでしょう。そこで、すぐに実践できる方法を紹介します。それは「相手に復唱してもらう」ことです。ただし、普通の復唱ではありません。以下の3つの質問の答えを含めて復唱してもらいます。

・なぜやるのか?(目的)
・どうなったら終わりか?(完了条件)
・いつまでにやるのか?(期限)

たとえばこんな会話になります。

上司「この資料を修正してもらえる?」
部下「はい。来週の商談で使うために、お客様が理解しやすいように修正するんですね。来週月曜の朝一番までに、お客様向けの説明資料として違和感のないレベルまで仕上げます」

この復唱を聞いて、意図が正しく伝わっていないと感じたら、その場で修正できますね。

◆最後に

「言った言わない」問題は、記録を取ることよりも、「明確に伝える」ことの方が重要です。相手に「わかった」と言ってもらうことより、「自分で考えて行動できる」状態にすることの方が大切なんです。

そのためには、目的・完了条件・タイミングの3つを明確にする。これを意識するだけで、組織の「言った言わない」は激減するはずです。

ぼくらは、相手に理解してもらおうとするより、「伝えた」という事実作りに走りがちです。でもそれは本末転倒。「証拠を残す」より「理解してもらう」ことに注力しましょう。そうすれば、「言った言わない」で消耗することなく、本来の仕事に集中できるはずです。

この記事を書いた人

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木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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