「指示したのに動いてくれない」
「伝えたつもりなのにズレる」
「部下が何度も確認に来る」
こうした悩みは、多くの管理職が抱えています。
これらの原因は部下の能力不足ではなく、指示の曖昧さかもしれません。
部下はエスパーではありません。
「察して動くこと」より、「明確な指示で動けること」の方が重要です。
また、
「私がすべての責任を取るから、自由にやってくれ」
これは多くのリーダーが口にするフレーズですが、実はこれほど無責任な言葉はありません。なぜなら、この言葉の裏には「具体的な指示を出すことを放棄している」という事実が隠れているからです。
本記事では、部下への指示の出し方を具体例つきで解説します。
部下への指示の出し方|まず押さえるべき5つのコツ
ある企業の営業部長はこう語ります。「リーダーの役割は責任を取ることだと思っていました。だから部下には『失敗を恐れずにやってみろ』と言い続けてきました。でも、結果は散々でした」
なぜうまくいかなかったのでしょうか。
その理由は明確です。メンバーは「何をすればいいのか」がわからないまま、とにかく行動することを求められていたのです。
指示がうまい上司には共通点があります。
それは「曖昧な言葉を使わないこと」。
特に重要なのが、次の5つです。
①ゴールを明確に伝える
まず、「何のための仕事なのか」を明確にします。
× この資料まとめておいて
〇 明日の役員会で使う資料を、5分で理解できる形にまとめてください
ゴールが曖昧だと、部下は方向を間違えます。
逆にゴールが明確であれば、どういう状態であればいいのかを自分で考えて動けるようになります。上の例であれば、まず「資料は明日の役員会で使うもの」ということ、そして簡単に理解できるような内容が望ましいということを理解できます。
②期限を具体的にする
「いつまでにやるか」を明確にしないと、優先順位が決まりません。
× なるべく早く
〇 今日17時までに
〇 明日の午前中までに初稿提出
部下も暇ではないので、期限が曖昧な指示は、ほぼ確実に後回しにされます。他の人から「優先度高めで」という仕事を受け取っているかもしれません。
期限を定めれば、それに合わせて仕上げることが可能になります。
③完成系のイメージを共有する
完成形を具体的に伝えることで、ズレを防ぎます。
× いい感じに提案書作って
〇 競合比較・価格・導入メリットが1枚で分かる提案書を作ってください
どんな情報を入れるべきかを伝えるということです。ここが抜けると、「やり直し」が増えます。しかし部下からしたら指示通りに作っただけなので、やり直しに対して不信感を感じ、関係性も悪くなってしまうリスクがあります。
口頭で伝えづらい内容であれば、過去の資料など具体的なイメージを渡すのもひとつです。
④判断基準を伝える
部下が迷うポイントで多いのが「どう判断すればいいか分からないとき」です。
× 任せるよ
〇 迷ったら利益率より継続契約を優先して判断してください
判断基準があると、確認回数が減り、スピードが上がります。
⑤途中確認のタイミングを決める
最初から完璧を求める必要はありません。
「途中で確認する前提」にすると、安心して進められます。
例:
・10時に方向性だけ確認
・16時に初稿チェック
これだけで、手戻りは大きく減ります。
また、「分からないことが出てきたらいつでも聞いて」と一言伝えておくのもいいでしょう。
なぜ部下に指示が伝わらないのか
指示が伝わらない原因は、ほぼ共通しています。
上司の頭の中が言語化されていない
上司は経験があるため、「当然わかるだろう」と思いがちです。
しかし部下にとっては、
・何を重視すべきか
・どこまでやればいいのか
・何が正解なのか
が分かっていません。
このズレが、すべての原因です。
抽象的な言葉が多い
以下のような言葉は、実は何も伝えていません。
「頑張って」
「工夫して」
「しっかりやって」
「いい感じで」
「お客様目線で」
これらは一見良さそうですが、行動に落とせません。
優先順位が伝わっていない
複数の仕事を抱えている部下は、「どれからやるべきか」で迷っています。
優先順位が曖昧だと、結果として動きが遅くなります。
成功しているリーダーの特徴
優れたリーダーに共通しているのは、以下の3点を必ず明確にしていることです:
・ゴールの明確化:「今期はこの数字を達成する」
・プロセスの明確化:「そのために、これとこれをやる」
・判断基準の明確化:「この基準で判断する」
たとえば、あるIT企業のプロジェクトリーダーは、こう語ります。「私の役割は、メンバーが迷わないように道筋を示すことです。具体的な数値目標を設定し、週次でその進捗を確認します」
リーダーの本当の役割とは
多くのリーダーは、「責任を取ることが仕事」だと思っています。
しかし、それは結果の話です。
本来の役割は、メンバーが成功できる状態をつくることです。
そのために必要なのが、
・明確なゴール設定
・具体的な行動指示
・判断基準の共有
です。
成功事例:製造業A社の場合
A社では、品質管理の責任者が交代する際、こんな変化がありました。
前任者:「品質は命。絶対に不良品を出すな。責任は私が取る」
結果:報告が上がってこない、問題の隠蔽
新任者:「不良率0.1%以下を目指す。異常値が出たら12時間以内に報告。週次で対策会議を実施」
結果:3ヶ月で不良率が半減、現場からの改善提案が3倍に
まとめ
部下が動かないとき、原因を部下に求めがちです。
しかし実際には、
・何をすればいいか分からない
・どこまでやればいいか分からない
・何が正解か分からない
という状態であることがほとんどです。
だからこそ重要なのは、「伝えた」ではなく「動ける状態にしたか」という視点です。
・ゴール
・期限
・成果物
・判断基準
この4つを言語化するだけで、組織は大きく変わります。
まずは今日の指示から、「それは行動に落ちるか?」を意識してみてください。
この記事を書いた人
木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。
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