メンバーのスキルセットが企業の未来を変える


ぼくらが抱える多くの企業課題は、その根本をたどると、スキル不足という問題にたどり着くことがよくあります。明確な目標がなく、曖昧なまま進めば、当然結果もついてきません。スキルセットの強化は、個人の成長に留まらず、企業全体の成功を引き寄せる鍵です。


スキルセットとは何か


スキルセットと聞くと、「専門知識」や「技術力」を思い浮かべるかもしれません。しかし、それだけではありません。チームで働く力、問題に立ち向かう力、そして自分自身をコントロールする力。これらもスキルセットの一部です。たとえば営業職なら、商品知識だけでなく、顧客の本音を引き出すコミュニケーション能力も重要です。スキルセットは、一つ一つが独立しているのではなく、組み合わさることで最大の力を発揮します。

スキル不足が引き起こす問題


スキル不足がどれほどの影響を与えるのか、少し想像してみてください。たとえば、上司があいまいに指示をすると、チームが混乱します。上司が「もっといい感じにしておいて」と指示を出したとします。この指示で、メンバーはどう動けばいいのでしょうか? この指示だけでは絶対に分かりませんね。結果として、メンバー各自が「いい感じ」を推測して、自分の考えで仕事をするしかありません。結果的に迷いや手戻りが発生し、生産性は下がります。

また、 問題解決能力がなければ、トラブルを解決できません。現場でトラブルが発生したとき、適切な対処ができなければ、問題が大きくなるばかりです。状況を悪化させるだけの対応では、信頼も失われます。そして当然ながら、チーム内のコミュニケーション不足は多くの弊害を生んでしまいます。部門間での意思疎通が十分に行われていないと、仕事は停滞します。「伝えたつもり」「聞いたつもり」で終わっていたら、いつどこでミスやトラブルがあっても仕方ありません。

身につけるべきスキルセット

では、メンバーが習得すべきスキルセットとは具体的にどんなものなのでしょうか? 3つの軸に分けて解説します。

●コミュニケーション能力

企業で最も必要とされるスキル、それがコミュニケーション能力です。言葉を使って意図を伝え、相手の意図を汲み取る。この基本ができていなければ、どんなに優れた能力も発揮できません。

アサーティブな表現 相手に配慮しながら、自分の意見も伝える。これができると、誤解が減り、信頼が築けます。
聞く力 話すことばかりではなく、相手の話をじっくり聞く力も重要です。その言葉の背景をくみ取ることで、より深いコミュニケーションが可能になります。
言語化力 自分の頭の中を明確にし、明確に相手に伝える力が必要です。特に職場のダイバーシティが拡がっていく時代では、お互いの「常識」も暗黙の前提も異なります。明確に伝えることは、すべての基礎です。

●問題解決能力

ビジネスにはトラブルがつきものです。それにどう向き合い、解決するか。その能力が、個人とチームの価値を決めます。

• ロジカルシンキング 問題を分析し、本質を見極める力。この力があると、解決策を迷わず選べます。
• 仮説検証力 限られた情報から仮説を立て、それを試して正しい答えにたどり着く。このプロセスを素早く繰り返すことが求められます。

●自己管理能力

時間や感情をうまくコントロールできる人は、仕事の効率も高いものです。この力が欠けていると、どんなに優秀な人材でも本領を発揮できません。

• 目標設定能力 短期的な目標と長期的な目標を具体化し、それに向けて計画を立てる。これが成果を出す第一歩です。
• ストレス管理 プレッシャーに押しつぶされることなく、冷静に仕事を続ける。そのための力が必要です。



●スキルセットを浸透させる方法

スキルセットを単なる理論に終わらせないために、企業としての取り組みが重要になります。以下の手順を実践することで、メンバーがスキルを身につけやすくなります。

・目標を明確にする
何のためにスキルを強化するのか。その目的をはっきりさせましょう。「売上を10%増やす」「チームのエラー率を半減させる」といった具体的な目標がメンバーを動かします。

・実践的なトレーニングを提供する
座学だけではスキルは身につきません。ワークショップやケーススタディなど、実際の業務に近い形でトレーニングを行いましょう。

・適切なフィードバックを与える
メンバーが成長するには、良い点と改善点を具体的に伝えることが欠かせません。「ここがダメ」ではなく、「次はこうしてみよう」という建設的な指摘が鍵です。

・成果を測定する
取り組みがどの程度効果を上げているのか、定量的な指標で確認しましょう。顧客満足度やプロジェクトの達成率など、成果が見える形にすることが重要です。

言語化がスキル向上を加速させる

どんなスキルも、言語化の力がなければ十分に発揮されません。言語化とは、頭の中で曖昧だったものを言葉に置き換え、明確にすることです。この力があれば、自分の考えを整理し、相手に的確に伝えることができます。
イラスト案:曖昧なアイデアが明確に整理されるプロセスを描いた図
たとえば、「会社を良くする」という目標では抽象的すぎて、具体的な行動に落とし込めません。しかし、「社員満足度を20%向上させる」と言語化すれば、そのために何をすべきかが見えてきます。

企業の課題を解決する鍵は、メンバーのスキルセットの向上にあります。特に、言語化を中心に据えたスキルの強化は、曖昧さを排除し、行動を明確にします。その結果、個々のパフォーマンスが向上し、企業全体が次のステージへ進む力を得られるでしょう。
スキルセットの強化はゴールではありません。それは、新しい課題に挑むための土台作りです。この土台を固めることで、企業とメンバーの未来は大きく変わります。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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