リーダー必見!チーム全員を巻き込む言語化の手法

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組織のリーダーとして、チーム全員を同じ方向に向かわせることは簡単ではありません。メンバーの性格も考え方も違う中で、どうすれば全員が理解して、納得して、動いてくれるのでしょうか。

単純に「頑張ろう」と声をかけても、メンバー全員の心に響くわけではありません。ぼくがこれまで言語化コンサルタントとして関わってきた事例から、チーム全員を巻き込む言語化手法と伝え方のポイントを解説します。

「全員一丸で」が逆効果になる理由

「チーム全員で頑張りましょう!」
「みんなで一丸となって取り組もう!」

こういった掛け声をよく耳にします。このフレーズに違和感を覚える方は少ないと感じますし、ぼく自身、若いころ先輩から「みんなで一丸となって乗り切ろう」という言葉を言ってもらえて安心感を抱いた記憶があります。

でも実際には、この言葉がチームの分断を生んでしまうことがあります。

あるIT企業での事例を紹介します。プロジェクトの立ち上げ時、リーダーは「全員一丸となって頑張りましょう」と宣言しました。確かに意気込みは伝わりました。しかし、この「全員一丸」という言葉が、かえってチームの足かせになってしまったのです。

エンジニアは「営業がもっと頑張らないと一丸にならない」と感じ、営業は「エンジニアがもっと協力的になるべき」と考えました。つまり、「一丸」という理想が、「こちらが他メンバーの面倒を見なければいけない」という印象を与え、かえってお互いの不満を浮き彫りにしてしまったのです。

「一丸」といっても、みんなが常に一緒に行動し、団体で同じ動きをするということではありませんね。では「一丸」とは何を指しているのでしょうか? 「チーム一丸」を掲げる前に、明確に言語化しなければいけないポイントがありました。

チームを巻き込む「三段階の共有」

では、どうすれば全員を巻き込めるのでしょうか?
ぼくが効果的だと感じているのは、「三段階の明確化と共有」です。

第一段階は「状況認識の明確化と共有」です。
プロジェクトの現状や課題を、できるだけ具体的な数字や事実で明確に言語化し、共有します。「今の営業成績はこうで、このままでは目標に届かない。特にこの3つの商品が売れていない」といった具合です。この時重要なのは、誰が悪いという話ではなく、純粋な事実だけを共有することです。

第二段階は「目指す姿の明確化と共有」です。
ここでは具体的なゴールを示します。「3ヶ月後にはこの数字まで持っていきたい。そのために、この商品のシェアを〇〇%まで上げる」というように数字を入れることで誤解なく伝わります。
ただ、数字で表せないものもありますね、定性的な目指す姿は、「○○さん(誰)が○×をできるようにする」というフレーズで表現することが有効です。ぼくらの仕事は誰かのために行いますね。その「誰か」が、「何か」をできるようになるから、ぼくらが仕事をしたと言えるわけです。その状態を表現することで、自ずとチームがやるべきことの方向性が見えてきます。
ただし、この段階でも「どうやって」という話はまだ出しません。

そして第三段階で「役割の明確化と共有」を行います。
このとき重要なのは、それぞれのメンバーに「タスクの個別ゴール」とアクションを明示して伝えることです。第二段階でチームのゴールを明確にしました。そして、それを各自の「タスク」に割り振ります。ここでは第二段階でチームゴールを言葉にしたように、「個別ゴール」を明確に言語化します。
数字を入れたり、「(誰)が(何)をできる状態にする」というフレーズで個別ゴールを設定しましょう。

この三段階を踏むことで、チーム全員が「自分たちは今どこにいて、どこに向かおうとしていて、自分は何をすればいいのか」を理解できるようになります。

反対意見を味方につける「逆転の発想」

チームのメンバー全員が賛成してくれることは、じつはそれほどありませんね。むしろ、誰かしら反対意見を持っているものです。ここで重要なのは、その反対意見を封じ込めるのではなく、むしろ積極的に引き出すことです。

ある電機機メーカーさんでは、新しい生産ラインの導入を検討していた際、現場のベテラン社員から強い反対意見が出ました。多くのリーダーは、この反対意見を押さえ込もうとするでしょう。しかし、この時にぼくがリーダーと話し合い、別の接し方をすることにしました。

「その反対意見は、このプロジェクトを成功させるための重要な指摘です。むしろ、その懸念点を解決できれば、より良いものになる。一緒に考えていただけませんか?」

このように声をかけたのです。すると、反対していたベテラン社員は、プロジェクトの重要な推進役になっていきました。なぜなら、自分の意見が否定されるのではなく、価値ある意見として認められたからです。

世代や立場が違うメンバーへの伝え方

最近の組織で特に難しいのが、世代や立場が異なるメンバーへの伝え方です。よく言われることですが、20代と50代では「常識」が全く違いますし、持っている「べき論」もかなり違います。そのため、同じことをやろうとして、同じように伝えても、メンバー1人1人で捉え方が変わるのです。

たとえば「チャレンジ」という言葉は、ベテラン層にとっては「今までのやり方を否定された」という印象を与えかねません。一方、若手にとっては「新しいことに挑戦できる」とポジティブに受け取られます。

大事なことは、表現をこねくり回すことではなく、自分が相手に何を伝えたいか、そして相手からどんな行動を引き出したいかです。

この企業のリーダーは、同じ内容を伝えるのに、相手によって表現を変えていました。表現力を豊かにすることが目的ではなく、相手から望む行動を引き出すことが目的です。
ベテラン層には「これまでの経験を活かして、さらに良くしていきましょう」、若手には「新しい視点で挑戦してみましょう」というように。一見、使い分けているように見えますが、本質的なメッセージは同じです。

そして、相手から望む行動を引き出すために、ビジュアルを使って「言語化(メッセージの明確化)」をさせることも効果的です。言葉だけで伝えると、どうしても解釈に差が生まれてしまうことがあります。それを防ぐために、視覚的な要素を取り入れることが重要です。

IT企業の成功事例では、オフィスの壁一面にプロジェクトの進捗状況を掲示していました。誰が何をいつまでにやるのか、今どこまで進んでいるのか、が一目で分かるようになっています。これにより、チーム全員が同じ情報を共有でき、お互いの状況も理解できます。

共感と理解を示す「確認の言葉」

最後に、決して忘れてはいけないのが「確認の言葉」です。メンバーの発言や行動に対して、共感や理解を示す言葉をかけることは、チームの一体感を生む上で極めて重要です。

たとえば「その視点は面白いですね」「その不安な気持ち、よくわかります」という言葉。一見、当たり前の言葉に思えますが、この一言があるかないかで、その後のコミュニケーションの質が大きく変わってきます。

重要なのは、この確認の言葉を「習慣」にすることです。時々ではなく、常に相手の言葉に反応を返す。そうすることで、メンバーは「自分の意見や気持ちが受け入れられている」と感じ、より積極的にプロジェクトに参加するようになるのです。

チーム全員を巻き込むことは、決して容易なことではありません。でも、正しい伝え方さえ身につければ、必ず実現できることなのです。リーダーの皆さん、ぜひこれらのポイントを意識して、チームコミュニケーションを見直してみてください。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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