リーダーに求められる能力は、時代とともに大きく変化してきています。かつては強いカリスマ性や決断力が重視されましたが、時代は変わり、今では異なるスキルが必要とされています。本当に成長し続けるリーダーに必要なスキルセットとは何なのでしょうか? ぼくがこれまで研修やコンサルティングを通じて様々な企業を見てきた経験から、各社共通の「次世代リーダーに求められるスキルセット」を解説します。
メンバーの強みを引き出す「観察力」
次世代リーダーに求められる第一のスキルは「観察力」です。これは単にメンバーの行動を見ているということではありません。
ある製造業のリーダーの例を紹介します。このリーダーは、メンバーの「普段と違う」に敏感でした。いつもは積極的に発言するメンバーが黙っているときも、普段は慎重なメンバーが急に活発になったときも、すぐに気づきます。そして、その変化の背景にあるものを探ろうとします。
「最近、会議での発言が減ってきているけど、何か気になることでもある?」
「この案件に関しては、いつもより積極的だね。何かアイデアがあるの?」
このような声かけができるのは、日頃からメンバー一人一人の特徴をしっかりと観察しているからです。
状況に応じて変化させる「柔軟性」
2つ目のスキルは「柔軟性」です。これは特に、世代や価値観が異なるメンバーが混在する現代の組織では欠かせません。
ベテラン社員には経験を活かせる役割を与え、若手には挑戦の機会を提供する。同じ目標に向かっていても、アプローチの仕方を変えていくわけです。これは単なる使い分けではありません。その人の持ち味を最大限に活かすための、戦略的な柔軟性なのです。
本質を見抜く「洞察力」
3つ目は「洞察力」です。表面的な現象だけでなく、その根底にある本質的な課題を見抜く力が必要です。
ある小売チェーンで、売上が低迷している店舗がありました。一見すると「商品力の問題」に見えました。しかし、このリーダーは別の側面に気づいたのです。それは「スタッフのモチベーション低下」でした。なぜモチベーションが下がっているのか。それは本部からの一方的な指示に対する不満が蓄積していたからでした。
この「なぜ」を掘り下げていく洞察力があったからこそ、本質的な解決策を見出すことができたのです。
全体を俯瞰する「戦略性」
4つ目は「戦略性」です。個々の課題解決だけでなく、組織全体としての方向性を見据える力が必要です。
成功しているITベンチャーのCEOは、こう語っていました。「今の利益を追求することは簡単です。でも、それが5年後、10年後の会社の姿につながっているのか。その視点を持ち続けることが大切なんです」
対立を解消する「調整力」
5つ目は「調整力」です。異なる意見や立場の対立を、建設的な方向に導く力が求められます。
これは単に妥協点を探ることではありません。それぞれの主張の背景にある意図を理解し、より良い解決策を見出すことです。「あなたがそう考える理由はわかります。では、それを活かしながら、こちらの課題も解決する方法を一緒に考えてみませんか?」というアプローチです。
相手の心に響く「表現力」
6つ目は「表現力」です。どんなに良いアイデアや方針を持っていても、それを相手に伝えられなければ意味がありません。
重要なのは、相手の立場に立った表現を選ぶことです。同じ内容でも、技術者には技術的な観点から、営業には顧客価値の観点から説明する。この使い分けができるかどうかが、リーダーとしての表現力を左右します。
決断に向き合う「覚悟」
そして7つ目が「覚悟」です。最終的な決断を下し、その責任を取る覚悟がなければ、リーダーとしての役割は果たせません。
ただし、この覚悟は「独りよがりの決断」とは異なります。メンバーの意見を聞き、データを分析し、様々な角度から検討を重ねた上での決断です。そして、その決断の理由を明確に説明できる。そんな覚悟が必要なのです。
すべては「言語化」から始まる
ここまで7つのスキルを説明してきましたが、実はこれらすべてに共通する土台があります。それが「言語化スキル」です。
観察力も、それを言語化できなければメンバーに伝わりません。柔軟性も、なぜそのアプローチを取るのかを言語化できなければ、相手からは恣意的に見えてしまい、説得力がかなり弱くなってしまいます。また、洞察力も、その本質を言語化できなければチームで共有することができません。
言語化とは、単に言葉にすることではありません。それは、自分の頭の中を整理し、相手に伝わるように明確にすることです。この基礎的なスキルがあってこそ、他のスキルも活きてくるのです。
成長し続けるリーダーになるために必要なのは、まずこの言語化というスキルを磨くことです。それができれば、他のスキルも自ずと向上していくはずです。なぜなら、言語化できるということは、自分自身がそのスキルを明確に理解し、実践できているということだからです。
この記事を書いた人
木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。
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