ビジネスコミュニケーションを一撃で変える言語化の技術

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ぼくたちは日々、たくさんの言葉を使ってビジネスを進めています。ミーティングでの発言、企画書の文章、顧客とのやり取り。しかし、その言葉が本当に相手に伝わっているでしょうか?多くの企業で、コミュニケーションの課題が成果に影響を与えているのが現状です。実は、この課題は「言語化」というスキルで解決できるのです。

言語化とは何か

言語化というと、ただ単に「言葉にする」と捉えられがちです。しかし、本当の意味での言語化とは、自分の頭の中を整理して明確にすること、そして相手に明確に伝えることを指します。

社内の会話でも「伝えているつもりで伝わっていないこと」がたくさんあります。たとえば、営業部門から「もっと顧客目線で考えて製品を作ってほしい」と要望が出ます。しかし、これを開発部門が聞いても「顧客目線」がどういうことなのか、何をすれば顧客目線の製品になるのかがわかりません。

たしかに言葉(「顧客目線」)にはなっていますが、明確にはなっていないのです。

なぜ言語化が重要なのか

ぼくが以前、ある製造業の企業で見た例を紹介します。新製品の開発プロジェクトで、リーダーは「品質にこだわる商品を作ろう」と呼びかけていました。一見、方向性は示されているように見えます。しかし、リーダーから見るとメンバーは全く指示通りに動いていませんでした。

それは、「何をしたらいいか分からないから」でした。

ここで問題なのは、「品質にこだわる」という言葉が明確になっていないことです。
「耐久性を高める」と捉えるケースもあれば、「デザイン性を追求する」と受け取ることもあります。言葉としては同じでも、受け取る側によって解釈が異なってしまうのです。

コミュニケーションにおける言語化の重要性

ぼくはこれまで数多くの企業で、コミュニケーションの課題に直面してきました。その多くに共通しているのが、「伝えているつもり」という状態です。

「ちゃんと方向性は示しているのに、メンバーが動いてくれない」と嘆くリーダーは多いです。確かにリーダーは毎日のように指示を出しています。でも、その指示が「いい感じに仕上げて」「もっと工夫して」といった曖昧な表現だったら、メンバーがそれに従って動けるわけはありません。

メンバーからすれば、何をどうすれば「いい感じ」なのか、どんな「工夫」を期待されているのか、まったくわかりません。結果として、リーダーの意図とはかけ離れた行動を取ってしまうのです。

効果的な言語化の方法

では、どうすれば効果的な言語化ができるのでしょうか?
ポイントは3つあります。

1つ目は「目的の明確化」です。なぜそれをする必要があるのか、どんな成果を期待しているのかを具体的に示します。たとえば、「売上を上げるために、新規顧客を開拓する。売上を増やせば、商品を改良する資金を確保でき、世の中にもっと貢献できる」などがあり得ますね。

2つ目は「行動の明確化・具体化」です。ゴールに向けて、具体的に何をすればいいのかを示します。「新規顧客開拓のために、まず業界データベースから500社をリストアップする。その中から優先順位の高い100社を選び、アプローチを開始する」といった具合です。

3つ目は「基準の設定」です。どこまでやれば良いのか、どの程度の質を求めているのかを明確にします。「アプローチの際は、相手企業の課題を3つ以上リサーチしてから連絡を取る」というように、具体的な数値や条件を示すことで、解釈のズレがなくなります。

チーム内の言語化の実践

ぼくが関わったIT企業で、こんな事例がありました。週次ミーティングで、メンバーの報告があまりにも抽象的でした。「順調です」「特に問題ありません」という言葉ばかり。これでは実態が見えてきません。

そこでリーダーは、報告の型を作りました。 「何が(対象)」 「どうなっていて(現状)」 「次に何をする(アクション)」

この3点を必ず含めるようにしたのです。すると、「Aプロジェクトの進捗率が70%で、来週の完了に向けて最終テストを実施します」というように、具体的な報告に変わっていきました。

プレゼンテーションにおける言語化

プレゼンテーションでも、言語化は重要です。プレゼンでは、こちらが「いい!」と思ってる案を相手に受け入れてもらえるよう話しますね。こちらは既に分かっているので、ちょっとでも油断すると言葉足らずになりがちです。

新規事業の提案で、「市場規模が大きく、成長の可能性が高い分野です」と説明します。しかし、このプレゼンの仕方では相手から「具体的に何の市場で、どれくらいの規模なのか?なぜ成長すると言えるのか?」と指摘されてしまいますね。

自分ではわかっているのことを、暗黙の前提にして端折ってしまうことがよくあります。抽象的な表現を避け、具体的な数字やデータで語ることの重要性です。それをかなり強く意識しなければいけません。

「この市場は現在◯◯億円規模で、年率◯◯%で成長しています。その理由は…」など、数字や背景の理由を交えて伝えなければいけません。

コーチングとトレーニングによる言語化の向上

言語化は、意識的に練習することで必ず上達します。ぼくがコンサルタントとして関わった企業では、次のような取り組みで成果を上げています。

まずは「三段階質問」という方法です。メンバーが「この企画はいいと思います」と言った時、リーダーは3つの質問をします。 「どういう点がいいと思う?」 「なぜそれがいいと考える?」 「具体的にどんな変化が期待できる?」

この質問を繰り返すことで、メンバーは自然と具体的に考え、言語化する習慣が身についていきます。

成果を生む言語化の事例

ある小売企業で印象的な事例があります。接客マニュアルの見直しを行った時のことです。それまでは「お客様に寄り添った接客を心がける」という抽象的な表現でした。これを、次のように言語化し直しました。

「お客様が商品を手に取ったら、3秒以内に声をかける」
「お客様の要望を聞く際は、具体的な用途や予算を確認する」
「商品説明では、必ず3つ以上の特徴を伝える」

「お客様に寄り添った接客を心がける」では、人によって解釈が異なりますし、やっているつもりでやっていないケースもたくさん出てきてしまいます。マインドも大事ですが、それ以上に「やるべきこと」を明示することがより重要です。

この企業では、マニュアルを言語化することで、接客の質が大きく向上し、売上も前年比120%に伸びました。

これからの課題と可能性

今、多くの企業で「DX」や「イノベーション」という言葉が飛び交っています。しかし、これらの言葉も実は曖昧なままです。ぼくたちに求められているのは、これらの抽象的な概念を具体的なアクションに落とし込む言語化の力です。

たとえば「DXを推進する」ではなく、「受注プロセスを自動化し、処理時間を半減させる」というように。「イノベーションを起こす」ではなく、「既存顧客の未解決の課題を20件ヒアリングし、新サービスの種を見つける」というように、「結局、何がどうなったらいいのか? そのために何をするのか?」を特定していきます。

最後に

言語化は、決して難しいスキルではありません。必要なのは、「曖昧なまま済ませない」という意識です。相手に伝わるまで、具体的に言葉にする。この simple な行動を続けることで、必ずコミュニケーションは改善されていきます。

ぼくたちの仕事は、結局のところ「人」と「人」のコミュニケーションで成り立っています。その要である言語化のスキルを磨くことで、ビジネスはもっとスムーズに、そして確実に成果を生み出せるようになるはずです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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