
多くのビジネスパーソンが「言語化が難しい」「どうすれば言語化できるようになるのかわからない」という悩みを抱えています。ぼく自身も以前は、言語化に大きな課題を抱えていました。周囲の顔色を伺い、「この場では何を言うのが正解なのだろうか」ということばかりを考えていたのです。存在しない正解を追い求め、自分の考えを表現することすらできない状態でした。むしろ、自分の考えを言ってはいけないと思い込んでいたのかもしれません。
言語化スキルを身に着け、自分の頭の中を明確にすることができれば、ビジネスパーソンとして大きく成長できます。言語化スキルがもたらすメリットを具体的に考えていきましょう。
言語化スキル向上による具体的な成果
発信者としての立場を経験し、様々なトレーニングを積み重ねることで、ぼくは自分の考えを整理し、明確に言葉で伝えることができるようになりました。その結果、ぼくの仕事人生は大きく変化しました。
まずは仕事の依頼が圧倒的に増加しました。ビジネスの規模で言えば、会社立ち会が当初と比べて売上は約20倍になりました。そして一方で、労働時間は3分の1程度まで減少しています。現在はハワイから仕事をすることも可能になり、自分の意図した時間の使い方ができています。
確かに仕事量自体は決して少なくありませんが、その大半が自分の好きなことや、やりたいと思っていることです。やらなければならないことや、やりたくもないのに取り組まなければならない仕事は、ほとんどありません。
コミュニケーションの質的変化
言語化スキルの向上は、対人関係にも大きな変化をもたらしました。以前は「お前の言っていることは何がなんだかわからない」「話がつまらない」といった指摘を受けることが少なくありませんでした。そのため、ぼくは自分が話すのが下手なのだと思い込んでいました。
しかし、言語化スキルを磨くことで、そうした否定的な反応は完全になくなりました。自分が言いたいことを即座に言葉にでき、さらには相手にわかりやすく伝えることができるようになったのです。
言語化スキル向上のための3+1の戦略
言語化スキルを向上させるために、ぼくは「3+1」の戦略を実践しています。
1. 目的の明確化
発言や発信の際には、まず目的を明確にすることが重要です。例えば、上司から「この商品についてどう思うか」と質問された場合、その質問の目的を確認することが有効です。「何のために意見を求められているのか」を理解することで、考えるべき範囲が明確になり、言語化がしやすくなります。
2. 比較による思考の具体化
人間は比較によって考えを整理しやすい特性があります。「最近どう?」という漠然とした質問に対しても、比較対象を設定することで、具体的な回答が可能になります。例えば、「サラリーマン時代と比べると、とても充実しています」「1年前と比べると、やりたいと思っていたことが形になってきて、順調です」といった具合です。
3. 違和感の言語化
想定と現実のギャップ、つまり違和感を率直に言語化することも重要です。例えば、ぼくがハワイで気づいたこととして、「朝晩は意外と涼しく、半袖だと寒いくらいです」という違和感があります。このように、思っていたことと違う点を素直に表現することで、自然な対話が生まれます。
完璧な分析や評論を目指す必要はありません。ぼくたちはアナリストでも評論家でもないのです。相手の人生を変えるような一言を言う必要もありません。ただ素直に違和感を言語化することで、十分なコミュニケーションが成立するのです。
効果的なスピーチスキルの向上
言語化の基本が身についた後の「+1」として、より効果的な話し方を身につけることも重要です。ぼくは以前、国語の教科書を音読することが苦手でした。中学校の先生から「木暮くんの読んだところは下手だったから、なかったことにしよう」と言われてしまったくらいです。でも今では、人前で原稿を見ずに話すことができるようになっています。これができたのは、この効果的な話し方のトレーニングをしたからです。
単に「場数を踏めば上手くなる」というのは誤解です。それは「毎日マラソンをすれば、オリンピック選手になれる」というのと同じくらい安易な考えです。効果的な上達のためには、良質なお手本を見つけ、その話し方を徹底的に真似ることが重要です。ぼくの場合、オリエンタルラジオの中田さんの話し方を完全にコピーする練習を行いました。声のトーン、スピード、間の取り方、抑揚の付け方まで、すべてを意識的に真似たのです。
まとめ
言語化スキルの向上は、単なる語彙力や表現力の問題ではありません。何を話すかという本質的な部分に焦点を当て、目的の明確化、比較による思考の具体化、違和感の言語化という3つの基本戦略を実践することが重要です。そして、効果的な話し方のスキルを身につけることで、さらなる成長が可能になります。興味深いことに、実際には言語化が十分にできていない人ほど、「自分はできている」と思い込んでいる傾向があります。そう感じてしまうと、自己成長はそこで止まってしまいます。非常にもったいないので「もっと明確にできるかもしれない」という視点で向き合うことをお勧めします。
これらのスキルを磨くことで、ビジネスパーソンとしての価値を大きく高めることができるでしょう。まずは自分が目指したい話し方のモデルを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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