人を動かす言葉、人の動きを止めてしまう言語化

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じつは行動を止めてしまう励ましの言葉

組織でよく使われる「頑張ってください」「もっと上を目指しましょう」といった言葉。一見、相手を励ます言葉に聞こえますが、実はこれらの言葉は相手の行動を止めてしまう可能性があります。なぜなら、これらの言葉は全く言語化されていない(明確になっていない)からです。

たとえば営業成績が芳しくないメンバーに「もっと頑張って」と伝えたとしましょう。確かにリーダーの気持ちは伝わるかもしれません。でも、具体的に何をすればいいのかわかりません。「頑張る」とは何をすることなのか、どの程度のことをすれば「頑張った」と認められるのか、まったく見えてこないのです。

具体的な指示で人は動く

反対に、次のように伝えるとどうでしょうか。

「今週は毎日3社以上にアポイントを取って訪問してほしい。そして、各社には自社の新商品が導入された場合のコスト削減効果を具体的な数字で示してほしい」

こちらの方が、メンバーは具体的に何をすればいいのかがわかります。「頑張る」という曖昧な表現ではなく、具体的なアクションとして示されているからです。

同じように「上を目指す」という言葉も要注意です。上とはどこを指しているのでしょうか? どの程度まで行けば「上に行った」と言えるのでしょうか? このように、到達点が不明確な言葉は、相手の行動を止めてしまいます。

人を動かす言語化の3つのポイント

では、どのように言語化すれば人は動くのでしょうか。ポイントは3つあります。

1. 具体的なアクション

「もっと営業力を上げよう」ではなく「毎日3社以上に訪問する」のように、具体的に何をすればいいのかを明確にします。

2. 達成基準

**「良い提案書を作る」ではなく「30分以内に読み終えられる長さで、かつ提案内容のコスト削減効果が数値で示されている提案書を作る」**のように、どこまでやれば達成なのかを示します。

3. 期限

「できるだけ早く」では人は動きませんし、動けません。「今週中に」「明日の午前中までに」など、具体的な期限を決めることで、相手は行動の優先順位をつけることができます。

たとえば、こんな会話を耳にしたことはないでしょうか。

リーダー
「この企画書、もうちょっと良くしてほしいな」
メンバー
「はい、承知しました……」

一見、指示が伝わったように見えます。しかし、この「もうちょっと良くして」という言葉は、まったく言語化されていません。何をもって「良い」とするのか、どこをどう変えればいいのかが不明確です。

これを次のように変えてみましょう。

リーダー「この企画書を修正してもらいたいです。修正点は3つですね。1つ目は、想定する顧客層を20代女性に絞ること。2つ目は、競合他社と比較した際の強みを数値で示すこと。3つ目は、実施時期を今期中に収めること。この3点を明日の午前中までに修正してほしいのですが、できそうですか?」

このように伝えれば、メンバーは具体的に何をすればいいのかがわかります。

曖昧な言葉が生む停滞

人を動かすためには、相手が取るべきアクションを明確にする必要があります。しかし現実には、多くの職場で曖昧な言葉が飛び交っています。「いい感じで」「臨機応変に」「バランスを考えて」など、一見それらしく聞こえる言葉も、実は何も言語化されていないのです。

特に注意が必要なのは「自分で考えて」という言葉です。確かにメンバーには自分で考えてほしい。でも、何を考えればいいのかがわからなければ、考えることすらできません。

具体的な指示と工夫の余地

サッカーの監督が「自分で考えてシュートを決めろ」と言うでしょうか?そんなことはありません。「ここを狙え」「このタイミングでシュートを打て」など、具体的な指示を出します。そして、その中でメンバーが工夫する余地を残すのです。

ビジネスの現場でも同じです。まずは具体的なアクションを示し、その中でメンバーが工夫できる部分を残す。これが人を動かすコツです。

言語化のバランス

とはいえ、すべてを完璧に言語化する必要はありません。むしろ、すべてを言語化しようとすると、かえって相手の動きを止めてしまう可能性があります。

たとえば、電話応対の手順を完璧に言語化しようとして、
「まずは『お電話ありがとうございます』と言い、次に『株式会社○○でございます』と言い……」
というように細かく指示を出すと、かえって相手は萎縮してしまいます。また、常にリーダーの顔を見ながら「これで正しいだろうか?」と考え、指示がないと動けないようになってしまいます。

大事なのは、メンバーが行動を起こすために必要な部分を言語化することです。行動の軸となる部分さえ明確になっていれば、細かい部分は相手の裁量に任せることができます。

見直すべきは組織の言葉

人を動かす言葉とは、相手が具体的にイメージできる言葉です。反対に、人の動きを止めてしまう言葉とは、曖昧で具体的なアクションが見えてこない言葉です。

あなたの職場では、どんな言葉が飛び交っているでしょうか?もし「頑張って」「もっと良くして」といった言葉が多いとしたら、それは相手の行動を止めてしまっているかもしれません。ぜひ一度、自分の言葉を見直してみてください。そして、相手が具体的に行動できる言葉に変えていってください。

それが、組織を活性化させる第一歩になるはずです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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