わかりやすく伝えるために、何をしたらいいか?

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私たちの周りは「わかりにくさ」であふれています。先生の難解な授業、専門用語だらけの説明、意味の通らない道案内…。こんな経験、誰もが一度はしたことがあるのではないでしょうか。

逆に、複雑な内容をすっきりと理解できる説明に出会ったとき、私たちは感謝の念すら抱きます。「あぁ、そういうことだったのか!」とスッキリした経験も、きっとあるはずです。

では、この「わかりやすく伝える力」とは一体何なのでしょうか?生まれつきの才能でしょうか?それとも誰でも身につけられるスキルなのでしょうか?

結論から言えば、これは誰でも身につけられる「スキル」です。今回は、誰でも実践できる「わかりやすく伝えるための方法」をご紹介します。

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わかりやすく伝えるために必要な2つのこと

わかりやすく伝えるために必要なのは、「適切な意識」と「適切な技術」の2つです。

まず「適切な意識」とは、「聞き手に何とか理解してもらおう」とする意識です。「説明してやる」という態度や「理解できなくても聞き手の責任」という考えでは、決して伝わる説明はできません。

次に「適切な技術」とは、「相手が理解しやすい表現を見つける技術」です。

この「意識」と「技術」が合わさって初めて、わかりやすい説明ができるようになります。どちらか一方だけでは不十分なのです。

意識を変える:相手をクライアントと思う

わかりやすく伝えるための第一歩は、相手を「クライアント」と考えることです。

お客様に対して商品説明をする営業マンは、説明が伝わらなかったら「お客様が悪い」とは決して思いません。「自分の説明の仕方が悪かった」と反省するはずです。

同じように、わかりやすく伝えるためには、「相手が理解できないのは100%自分の責任」という意識を持つことが大切です。相手の立場、知識、経験を考慮し、どうすれば理解してもらえるかを常に考えるのです。

これはお笑い芸人と同じです。「客が笑わないのは、客のセンスが悪いから」とは言いません。「自分の芸が面白くなかったから」と考えます。説明も全く同じなのです。

相手の人生を共有する

意識を変えただけでは、わかりやすく伝えることはできません。次に必要なのは「相手の人生を共有する」ことです。

これは「相手がどんな言葉を使い、どのように考えるか」を理解することです。たとえば、小学生と大学教授では、理解できる言葉や表現が全く違います。わかりやすく伝えるには、相手が使う言葉で話す必要があるのです。

例えば、パソコンのマウスを説明するとき:

  • 幼稚園児には「お茶碗をさかさまにしたような形をしてて、そこからひもが出てるもの」
  • お年寄りには「パソコンの操作をするリモコンみたいなもの。ネズミみたいな形をしていて、しっぽみたいなコードがついている」
  • ITの専門家には単に「マウス」と言えば十分

このように、相手によって最適な表現は変わります。

技術を磨く:具体的な表現方法

意識を変え、相手の立場を理解したら、次は具体的な技術を身につけましょう。

1. 文章は短く

長い文章は理解を妨げます。一文に複数の内容を詰め込まず、短くシンプルに表現しましょう。

悪い例: 「今月のプロジェクトの成果を振り返って感じることは、市場環境が悪化したとはいえ、競合他社が新製品を発表してどんどん勢力を拡大しつつあり、一方でなんといっても業界大手だったX社が廃業に追い込まれるという事態を見て、世の中のスピードがますます速くなっていっているという実感は持たずにはいられませんが、売上が目標まで届かなかったことは悔しくて、自分たちの反省としなければいけないということです。」

良い例: 「今月の業績を振り返ると、売上が目標まで届かなかったことを反省しなければいけません。市場環境が悪化したとはいえ、競合他社は新製品で勢力を拡大しています。業界最大手のX社が倒産するなど、業界の変化スピードが加速していることを実感しています。」

2. 一文には一つの内容だけを入れる

一文に複数の内容を詰め込むと、何が言いたいのかわからなくなります。一文には一つの内容だけを入れるようにしましょう。

3. 主語と述語を近づける

日本語は主語と述語が離れやすいという特徴があります。これが理解を難しくします。

悪い例: 「私は、小さい頃からかわいがってくれていた近所のおばさんが引っ越した先で経営している山奥の小さな駄菓子屋さんでずっと楽しみにしていた来週の学校遠足のお菓子を買いました。」

良い例: 「私は、山奥の小さな駄菓子屋さんでお菓子を買いました。来週の学校遠足用のお菓子です。この駄菓子屋は、小さい頃から私をかわいがってくれていた近所のおばさんが引っ越し先で経営しているのです。」

4. 専門用語や略語を避ける

専門用語や略語は、同じ業界の人間には便利ですが、それ以外の人には全く理解できません。できるだけ一般的な言葉で説明しましょう。

5. 抽象的な表現を避ける

「○○的」「○○性」のような抽象的な表現は避け、具体的な言葉で説明しましょう。

悪い例:「この商品は、起動時の即時性がウリです」 良い例:「この商品のウリは、素早く起動することです」

6. 無生物主語を避ける

「不確実性がビジネスチャンスを生む」のような無生物主語の文は、イメージしづらく理解を妨げます。

悪い例:「税金の存在が企業の体力を奪う」 良い例:「税金があると、企業の体力が奪われます」

説明の構成を工夫する

1. 最初に全体像を示す

新しい情報を理解するには、まず全体像を把握することが大切です。詳細に入る前に「今からこういう話をします」と伝えることで、聞き手は安心して話についてくることができます。

2. 説明内容の意味づけを最初に行う

「なぜこの情報が重要なのか」を最初に伝えると、聞き手の理解が深まります。目的がわかれば、情報を整理しやすくなるからです。

3. こまめにまとめる

長い説明の後には必ずまとめを入れましょう。人間は新しい情報をそれほど長く覚えていられません。こまめに重要ポイントを振り返ることで、理解が定着します。

4. 抽象と具体を交互に使う

抽象的な説明だけでは理解しづらく、具体例だけでは全体像がつかみにくいものです。抽象的な説明と具体例を交互に使うことで、理解が深まります。

練習方法:頭の柔軟体操

わかりやすく説明する力は練習で身につきます。以下のトレーニングを試してみましょう。

1. 名詞を動詞に変換する

「依存」→「頼る」、「黒字化」→「黒字になる」のように、名詞を動詞に変換する練習をしましょう。

2. 熟語を分解して文章にする

「確定拠出年金」のような熟語は、「支払うお金が決まっているタイプの年金」のように分解して理解しましょう。

3. カタカナ語を日本語で考える

カタカナ語は「なんとなく分かった気」になりやすいものです。必ず日本語に置き換えて考える習慣をつけましょう。

最後に

わかりやすく伝えることは、特別な才能ではなく、誰でも身につけられるスキルです。

「相手を理解しようとする意識」と「具体的な表現技術」を身につけることで、あなたも「わかりやすく伝える人」になることができます。

さらに、このスキルは相手とのコミュニケーションを豊かにするだけでなく、自分自身の理解力も高めてくれます。他人に説明できるということは、自分自身が深く理解しているということだからです。

日常の中で意識して実践していけば、少しずつ「わかりやすく伝える力」は必ず身についていきます。さあ、今日から始めてみませんか?

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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