マネジメント理論を学ぶ必要性と実践のポイント

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自分で考えて動くメンバー、ほしいですよね

でも、経営者からしたら「自走して動くリーダー」こそ必要な人材です。「メンバーが自分で考えて動かない」と嘆きたくなる気持ちもわかりますが、リーダーが何をしたらメンバーが自走するようになるのかを考えれば、組織全体がみるみる動き出すと思います。

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はじめに

ビジネスパーソン、特にリーダー職にとって、マネジメント理論を学ぶことは人材育成や組織運営の土台を支える重要なものです。現場の経験や勘だけに頼る方法から脱却し、理論に裏付けられた体系的なアプローチを取ることで、より戦略的で効果的な人材育成が可能になります。

しかし、一方で理論を学んだだけでは組織は変わらないのも事実です。知識を現場で活かすには何が必要なのでしょうか。ここではリーダーがマネジメント理論を学ぶ必要性を解説し、理論だけでは実現できないことを実例とともに紹介します。さらに、学んだ理論を実務で活かすために必要な要素も解説します。理論と実践を結びつけ、社員育成や組織改善に役立つヒントを掴んでください。

マネジメント理論を学ぶ必要性

まず、リーダーがなぜ知識として「マネジメント理論」を学ぶ必要なのでしょうか? その理由は大きく二つあります。

  • エビデンスに基づく人材育成の実現: 従来、人材育成は現場の経験則や上司の勘に頼りがちでした。しかし事業環境が複雑化する現在、これまで通りのやり方だけでは不十分です。理論を学ぶことで人材育成施策に明確な根拠を持たせることができ、経営層にも納得感のある説明ができるようになります。例えば、「目標管理(MBO)」や「心理的安全性」といった理論を知っていれば、人事施策に科学的な裏付けを与えられるでしょう。

体系的で効果的な施策設計: 理論を知ることで、人材育成プログラムやマネジメント研修を体系立てて設計できます。限られた時間や資源の中で最大の効果を引き出すには、理論に基づく計画が欠かせません。例えば、人材育成の分野ではX理論・Y理論(マクレガー)といった有名なマネジメント理論があります。X理論は人を「厳しく管理しなければ働かない存在」とみなし、アメとムチによる動機付けを重視します。一方のY理論は「人は自ら進んで働き、自己実現に向かう存在」と捉え、自主性を引き出す関わり方を推奨します。このような理論を理解していれば、社員のモチベーションを引き出す施策も、根拠に基づいて設計することができます。

要するに、マネジメント理論を学ぶことで、人事担当者は経験だけに頼らず科学的で説得力のある人材マネジメントを行えるようになるのです。

理論を知るだけでは実現できないこと

しかしながら、理論を知っているだけで現場の問題が解決するわけではありません
実務で成果を出すには、知識を行動に移すプロセスが必要です。この「知っていること(Knowing)と行動(Doing)の不一致」はKnowing-Doingギャップとも呼ばれ、スタンフォード大学のジェフリー・フェファー氏らによって指摘されています。彼らの調査によれば、多くの組織では「何をすべきか分かっているのに実行に移せていない」という現象が生じており、業績にも悪影響を及ぼしているといいます。

実際、単に理論を学んだだけでは能力は伸びません
学ぶことは成長の第一歩にすぎず、それだけで満足していては実務で成果を上げられないのです。

例えば、管理職研修で最新のマネジメント手法を学んだAさんがいるとしましょう。Aさんは研修内容を頭では理解し、会議でも理論に基づいた提案を熱心に語ります。しかし、いざ現場に戻ると自らの行動やチームの運営方法は研修前と変わらず、部下への接し方も従来通りです。このように知識を持っているだけで自分の行動を変えられないタイプは、しばしば“頭でっかち”になりがちです。

勉強熱心で情報収集は得意でも、実際の現場では机上の空論に終わってしまう──残念ながらこれは多くの職場で見られる光景です。

こうした例が示すように、マネジメント理論は学ぶだけでは不十分であり、「知る」から「できる」へのステップを踏むことが求められます。知識を現実の行動に転換してこそ、初めて理論が生きたものとなるのです。

理論を実務で活かすために必要な要素

では、学んだ理論を実務で活かすためにはどのような要素が必要なのでしょうか。ここでは、理論と現場を橋渡しするための重要なポイントをいくつか解説します。

  1. 理論の正しい理解と文脈への適用: まず前提として、学んだ理論を自社のコンテクストに合わせて理解し直すことが必要です。ただ暗記するのではなく、「自社や自部門ではこの理論をどう応用できるか」を考えましょう。マネジメントには暗黙知(形式化されていない知識)が多く含まれ、単純にマニュアル化できません。カナダの経営学者ヘンリー・ミンツバーグも、「マネジメントは特定の文脈に依存するため、ある現場で得たスキルや手法は別の状況ではそのまま通用しない」と述べています。したがって、人事担当者は理論を自社の課題や文化に照らし合わせ、必要に応じてカスタマイズする視点を持つことが重要です。

  1. 小さくても良いので実践し、経験を積む: 理論を知識で終わらせず、まず行動に移してみることが肝心です。例えば、新しく学んだフィードバック手法があれば、早速部下との1on1面談で試してみるといった具合です。暗黙知の多いマネジメントスキルは、現場で試行錯誤しながら初めて身についていきます。理論のすべてを一度に完璧に実行する必要はありません。重要なのは、インプット(理論習得)したらアウトプット(実践)するサイクルを回すことです。知識を現場で使ってみることで、理論への理解も一段と深まり、必要に応じて修正・改善ができるようになります。現場での経験を積むほど、「知っている」から「できる」へのギャップが着実に埋まっていくでしょう。

  1. チームへの共有と共通言語化: マネジメント理論は、マネージャー個人が理解するだけでなくチーム全体で共有し、共通言語とすることで効果を発揮します。例えば、「目標設定のSMART理論」を学んだなら、チームでもSMARTの考え方に沿って目標を立てるよう促すなど、理論を組織のルールや文化に組み込んでいきます。部署内に蓄積された属人的な知識や情報があれば、管理職がそれを言語化して共有することも重要です。文書化された形式知は共有しやすいですが、感覚や経験に根ざした情報(暗黙知)は放置すると属人化します。マネージャーが自分だけが持つ情報やノウハウをかみ砕いて言葉にし、チームに伝えることで、初めて組織知として活用できます。人事担当者は研修やミーティングを通じて、こうした共通言語化を支援すると良いでしょう。

  1. 言語化スキル(明確に考え、明確に伝える力): 最後に、そして特に重要なポイントが「言語化スキル」です。これは頭の中の考えを整理し、的確な言葉で伝える技術を指します。どんな優れた理論も、現場でそれを部下や同僚に伝え、行動を促すことができなければ絵に描いた餅になってしまいます。実際、マネジメント研修の現場でも「学んだ内容を職場でアウトプットする際には、頭の中を正しく言語化することが重要だ」と指摘されています。リーダーシップを発揮する場面でも部下を指導する場面でも、必ず「人に伝える」というプロセスが発生しますが、ここで自分の考えを上手く言語化できないと誤解を招いたり、意図が伝わらず信頼関係を損ねたりしかねません。逆にいえば、考えを明確に言葉にできれば、相手との認識ズレを減らし組織を効果的に動かすことができるのです。

  1. 言語化スキルの重要性は、多くのビジネスリーダーも強調しています。例えばグロービス経営大学院の記事では、「問題解決、人を動かす、クリエイティブに考える――これらは言葉を操る力、すなわち言語化の力がなければ実現できない」とまで言われています。
  2. 時代をリードする経営者にとって、言語化力を磨くことは必須要件だというのです。また、自分の持つノウハウや経験を言語化して組織内で共有することが、できるリーダーの姿だとも説かれています。

おわりに

マネジメント理論を学ぶことは、人事担当者にとって実務の地図とコンパスを手に入れるようなものです。理論を知ることで人材育成に科学的根拠を与え、効果的な研修や制度を設計できるようになります。しかし、その地図を持っているだけでは目的地に到達できません。大切なのは、知識を現場で活かす架け橋を築くことです。現場で実践し、経験知と結びつけることで初めて理論が現実の成果に結びつきます。

その橋渡しにおいて、言語化スキルは特に強力なツールとなります。明確に考え明確に伝える力があれば、マネジメント理論という知識を組織への働きかけに変換し、人々を動かすことができます。逆に言語化なくして理論の実践は難しく、せっかくの知識も宝の持ち腐れになりかねません。

リーダーは、社内で理論と実践をつなぐファシリテーターとして、この言語化スキルの重要性を伝え、メンバーに接していきましょう。理論を学び、現場で使い、言葉で伝える――そのサイクルを回せば、マネジメント施策は机上の空論ではなく生きた成果となって現れるはずです。今日からぜひ、学んだ理論を一つでも現場で言葉と行動に移す一歩を踏み出してみてください。それが組織を変える大きな力になるのです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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