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コミュニケーションとは明確に考え、明確に伝え、明確に相手を理解すること

ぼくが考えるコミュニケーション能力とは、お互いが考えていることを理解する能力です。自分が考えていることを相手に伝える力であり、相手が考えていることを引き出して自分が理解する力でもあります。そしてそれ以前に、自分の頭の中を自分自身で明確に捉える力でもあります。

ぼくは、コミュニケーション能力を「考えを明確にし、明確に伝える力」「相手の頭の中を言葉にして理解する力」だと思っています。よく「伝える力&聴く力」と表現されますが、伝えるだけじゃなくて「明確に伝える」が必要ですし、「聴く」ではなく、「明確にして理解する」が大事です。

仕事でも日常生活でも、あらゆる場面の基盤はコミュニケーション、つまりこの2つの力です。どんなに専門スキルを磨いても、これらがなければその能力を活かすことはできないし、組織は機能しないのです。

そして、「明確に伝える」とは、相手に自分の意図した情報や感情を正確に伝えることです。さらにビジネスの場では特に「相手から意図した行動を引き出すこと」までを含みます。つまり自分の考えを的確な言葉にし、相手に届く形で伝えることができて、はじめて「伝えた」となるわけです。

残念ながら、日本では「伝え方」を体系的に教わる機会がなく、そのために「伝えたつもりが伝わっていない」状況が頻発しています。ぼく自身、多くのビジネス現場でこの問題に直面し、「伝わらない言葉」になってしまう原因と解決策を長年研究してきました。

よくある誤解

コミュニケーション能力について、よくある誤解を正しておきましょう。まず、「話し上手=コミュニケーション能力が高い」とは限りません。わかりやすく伝えるスキルは、単なる話し方やプレゼンのテクニックとは別物です。

声の大きさやジェスチャー、舞台上でのパフォーマンスは「分かりやすさ」とは本質的に関係がありません。肝心なのは情報の整理と伝達順序なのです。コミュニケーション能力は「どう表現するか」よりも「何を伝えるか」が重要であり、話術の巧拙とは一線を画します。

また「聞き上手=コミュニケーション上手」という見方についても、ただ相手の話を黙って聞くだけでは不十分です。傾聴力とは相手の意図を汲み取り、自分の言葉で理解を確認できることです。この双方向のプロセスが本来の「聞く」コミュニケーションなのです。

ぼくの「伝わる伝え方」メソッド

たとえば、ぼくは著書『わかりやすく伝える』で、誰でも実践できる4つのステップを提唱しています。

  1. 「誰に」「何を」伝えるのかを明確にする
  2. 相手に伝わる言葉を使う
  3. 話を正しい順序で組み立てる
  4. 相手の反応を見て表現を調整する

その中核となるのが「テンプレップの法則」です。これはぼくが考案した情報整理の型で、

1)Theme(テーマ)
2) Number(ポイント数)
3) Point(結論)
4) Reason(理由)
5) Example(具体例)
6) Point(結論の再提示)

という順序で話を構成します。

「今から〇〇の話をします」と宣言し、「ポイントは3つあります」と予告。「結論は〇〇です」と示し、「なぜなら〇〇だからです」と根拠を述べ、「例えば〇〇」と実例を示し、最後に「要するに〇〇ということです」で締めくくる。

特に「話す前にテーマを宣言する」ことが最重要で、わかりづらい説明の8割以上は冒頭でテーマを言っていないことに起因します。「今から話すのは○○です」と一言添えるだけでコミュニケーションの質は大きく変わるのです。

言語化力とリーダーシップ

ぼくは「言語化コンサルタント」として、「あいまいな思考や知識を、伝わる言葉に変換する力」の重要性を訴えています。リーダーにとってこの言語化力は想像以上に大きな意味を持ちます。

チーム内で起こる問題の9割はリーダー側の言語化不足で解決できます。そのためリーダー自身が自分の考えを明確に言葉にし、部下に「何をすべきか」まで落とし込んで伝えることが重要です。

経営者はビジョンを、リーダーはアクションを、メンバーはコミュニケーションを言語化する——このように各層が言語化を徹底すれば、組織全体が一体感を持って動けます。指示を明確に言語化することでお互いのストレスが減り、属人的になりがちなノウハウも共有され、チームの生産性とモチベーションが飛躍的に向上するのです。

おわりに

ぼくの主張をまとめると、コミュニケーション能力とは「自分の伝えたいことを相手に正確に届ける力」であり、そのためには自分の考えを言語化して明確化することが不可欠です。これは表面的なテクニックではなく、誰もが習得できるスキルなのです。

ぼくの提唱するコミュニケーションスキルは「どう表現するかではなく、何を表現するか」に着目したもの。まずは伝えたい中身を明確にし、今回紹介したポイントを意識すれば、あなたの伝え方は格段に変わるはずです。今日から早速、自分の伝えたいことを言語化して整理し、相手に伝わる形でアウトプットする練習をしてみませんか?

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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