
上司からくるあいまいな指示に困惑しているメンバーは多いです。でも上司は自分の指示が「あいまい」であることを自覚していません。しっかりと言ったつもりになっちゃっているので、「もしかしたら相手が理解できていないかも?」と考えることもありません。

この漫画も同じです。職場で上司が「あの件、よろしく」とだけ伝え、部下が何を指しているのかわからず困惑する場面はよく見られます。こうした曖昧な指示がなぜ生じるのか、その背景と具体的な解決策を紹介します。
職場で「あの件、よろしく」と上司に言われたものの、一体どの件のことかわからず、部下が後で叱責されるという状況を描いた漫画があります。この漫画では、部下が困惑した結果、結局仕事が進まず、「察しが悪い」「気を利かせてほしい」と批判される理不尽さが描かれています。
このような状況は、実際の職場でも頻繁に見られる問題です。なぜこうした曖昧な指示が発生し、混乱を招くのでしょうか。
なぜ曖昧な指示が生まれるのか?
曖昧な指示の背後には、多くの場合、上司側の「察してほしい」という期待感があります。特に日本では、直接的な言葉で明確に指示をするよりも、「言わなくてもわかるだろう」「空気を読んで欲しい」という心理が根強くあります。これには「以心伝心」という日本特有のコミュニケーション文化が関係しています。
また、上司自身も業務が多忙なため、短い言葉で済ませてしまう傾向にあります。特に中高年の世代には、自分が新人時代に同様の曖昧な指示を受けて育ってきたため、同じ方法を無意識に使ってしまうという悪循環もあります。
曖昧な指示が生み出す負のスパイラル
曖昧な指示を受けた部下が何をすべきかわからず行動に移せないと、業務の停滞やミスが発生します。その結果、「言われないと動けない」「気が利かない」と批判され、自信を失い、心理的な安全性も失われてしまいます。この悪循環は組織全体の生産性を低下させるだけでなく、職場の人間関係悪化にもつながります。
社会的背景にあるコミュニケーションの問題
この問題の社会的背景には、日本のハイコンテクスト文化(言葉に頼らず、背景や状況、非言語的な手がかりで伝達を行う文化)があります。日本の職場では、「暗黙の了解」「空気を読む」ことが重視されるため、明確なコミュニケーションが軽視されがちです。
しかし、職場の多様化が進み、外国人労働者や世代間のギャップが広がるにつれて、こうした曖昧なコミュニケーションは通用しにくくなっています。もはや察しや「暗黙の了解」に頼ったコミュニケーションだけでは、現代のビジネス環境に適応できないのです。
解決策:言語化を徹底する
曖昧な指示の問題を解決するために最も効果的な方法が「言語化(明確にすること)」です。
言語化とは、「明確化」のことです。言葉にして話していても、それが「例の件、いい感じで頼むよ」などの曖昧なフレーズであれば言語化できているとは言えません。一方で、言葉を使っていなくても相手に明確に伝わっているのであれば、それが図形でも数字でも「言語化」したことになります。
業務指示をする際には、誰が、何を、いつまでに、どのように行うのかを具体的に明確化する必要があります。
例えば、「あの件よろしく」ではなく、「明日の会議で使う資料を、今日の17時までに提出して欲しい」というように具体化することで、部下は迷うことなく正しく行動できます。
組織内での言語化促進方法
組織全体で言語化を促進するためには、次のような取り組みが有効です。
- 明確なコミュニケーションのルール化
- 指示や報告を行う際に「5W1H」を必ず意識するルールを設け、教育を徹底します。
- フィードバック文化の構築
- 部下が曖昧さを感じたら即座に質問できる環境を作り、上司も質問を歓迎する姿勢を示します。これにより、曖昧な指示を未然に防ぐことができます。
- 上司向けのコミュニケーション研修
- 特に中高年の上司に向けて、曖昧さのリスクや具体的な指示の出し方を伝える研修を実施することで、世代間のギャップを埋めます。
言語化によるメリット
指示を明確に言語化することで、職場の生産性が向上するだけでなく、部下が自主的に動けるようになり、自信や主体性を持って仕事に取り組めるようになります。また、指示を出す側も意図が正しく伝わり、結果的にストレスが軽減され、双方にとって職場環境が良くなります。
また社内メンバーが言語化ノウハウを身に着けていれば、話を聞いた側も「どこが曖昧か」を自分で見つけることができ、相手に質問ができます。そして質問されれば答えられますよね。お互いが言語化スキルを身に着けることで、相乗効果を発揮できるわけです。リーダーだけでなく、若手メンバーも含めて言語化トレーニングを推進していきましょう。
「察して」にならない明確な職場づくりを
曖昧なコミュニケーションは、職場で不要な混乱と不満を生みます。社会的背景としての「以心伝心」文化はあるものの、現代社会では適応が難しくなっています。解決策は明確な指示を「言語化」することです。これにより組織の効率性が上がり、良好なコミュニケーションと働きやすい環境が実現します。察しに頼る文化を脱却し、言語化された明快な職場づくりを推進していきましょう。
この記事を書いた人

木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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