
はじめに
近年、「人的資本経営」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ぼくは常々、企業の持続的成長において人材の重要性を実感していますが、具体的に何を意味し、なぜ今重要なのでしょうか?また、企業が今後取り組むべきことは何なのでしょうか?本記事では、人的資本経営の定義と意義、そして企業が取り組むべきポイントについて解説します。
人的資本経営とは?
まず、「人的資本経営」とは何でしょう? 漢字だけ見てもイマイチわかりませんね。
人的資本経営とは、「従業員を単なる労働力やコストとしてではなく、企業価値を生み出す重要な資本(人的資本)として位置づけ、戦略的に投資し活用する経営手法」です。従来の労務管理の枠を超え、従業員の能力や意欲、創造性を最大限引き出すことで企業価値を高め、持続的な成長を目指すアプローチといえます。
この考え方の背景には、企業の競争力の源泉が物理的な資産(設備や資金)から、知識やノウハウ、イノベーションを生み出す人材へと移行していることがあります。特に現代のような変化の激しいビジネス環境では、社員一人ひとりの自発性や創造性、柔軟な対応力が企業の競争優位を大きく左右します。
と自分で書いて言うのもなんですが、非常に当たり前のことではないでしょうか。むしろ、これまでも社員メンバーが競争力の源泉と捉えて、人材を「人財」と呼んだりしてきたと思います。なので、ここで考えを止めてしまうと、「今までと変えなくてもいいよね」となってしまいます。
人的資本経営の意義とは?
問題は、何を狙って、何をするか? です。人的資本経営の意義は大きく3つあると考えています。
1. 生産性・イノベーションの向上
人的資本に投資することで、社員の能力が高まり、創造性や主体性が発揮されやすくなります。例えば、継続的な学習機会を提供している企業では、従業員が積極的に新たなスキルや知識を習得し、それが新商品やサービスの開発につながるケースも少なくありません。
2. 従業員エンゲージメントの強化
従業員を資本として尊重し、適切な評価やキャリア支援を行うことにより、会社への愛着や働きがいが向上します。従業員のエンゲージメントが高まることで、離職率が低下し、優秀な人材が定着しやすくなる効果も期待できるでしょう。
3. 投資家・市場からの評価向上
ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が広がる中で、投資家や市場は企業が人的資本をどのように扱っているかに注目しています。人的資本経営を積極的に推進する企業は、社会的責任を果たす企業として投資家から高い評価を受け、資金調達の条件や企業価値向上にもつながります。
企業がこれからすべきこと
人的資本経営を進めるためには、具体的に次の3つのポイントを意識する必要があります。
1. 人的資本の可視化・定量化
まずは自社の人的資本を可視化し、定量的な指標を設定することが必要です。例えば、社員の能力向上を測るための研修時間や資格取得率、エンゲージメントを測る従業員満足度や離職率、多様性を評価する女性管理職比率などが挙げられます。これらの指標を明確化することで、人的資本の現状把握と改善施策の効果測定が可能になります。
2. 人材育成とキャリア支援の強化
人材への投資を経営戦略の中心に据え、従業員一人ひとりのキャリア開発をサポートする制度を整備することが求められます。研修や教育制度を充実させるだけでなく、適材適所の人材配置、キャリア面談の実施、柔軟な働き方の推進など、多面的な支援策を展開していく必要があります。
3. 経営層のコミットメント
人的資本経営は経営トップの理解と強いコミットメントなしには成り立ちません。経営層が率先して人的資本投資の重要性をメッセージとして発信し、それを企業文化として根付かせていくことが重要です。経営層が社員の声を積極的に聞き、実際の施策に反映する姿勢を示すことで、従業員の信頼感やモチベーションを高めることができます。
まとめ
人的資本経営は、単に「人を大切にする」だけではありません。人的資本への戦略的な投資を通じて、企業の競争力を高め、持続的成長を実現する経営手法です。企業にとって、人的資本を積極的に評価・育成し、その価値を最大化する取り組みがますます求められています。
自社の人的資本を見直し、これからの経営戦略にしっかりと位置付けていきましょう。 人的資本経営を成功させるためには、リーダーや経営者の言語化スキルの向上が不可欠です。明確に考え、それを明確に伝える能力がなければ、どれだけ優れた施策を立案しても現場に浸透しません。
言語化スキルを磨くことで、企業全体で人的資本経営が円滑に推進され、従業員が真に活躍できる環境が生まれます。
この記事を書いた人

木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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