
企業活動において、コミュニケーションは不可欠な存在です。しかし、そのコミュニケーション自体は目的ではありません。コミュニケーションを改善することも目的にしてはいけません。コミュニケーション自体は、「減らせるなら減らした方がいいもの」です。コミュニケーションは「コスト」なんです。
会議でお互いの認識を合わせたりしていますが、そもそも認識がそろっている方がいいですよね。
チームビルディングのための活動をすることもありますが、それをやらなくてもチームがまとまるのであれば、その方がいいですよね。
コミュニケーションを目的にしてはいけませんし、コミュニケーションは多大なコストを生んでいるという現実があります。実は多くの企業が、コミュニケーションにかかる「見えない損失」に気づいていないのです。
コミュニケーションが生む4つのコスト
コミュニケーションは以下の4つの側面でコストとなっています。
①時間的ロス
ある調査では、ビジネスパーソン1人当たり週に7.5時間が効果的でないコミュニケーションで無駄になっています。これは年間に換算すると膨大な時間の損失を意味します。生産性に直結するこのロスは企業規模が大きくなるほど影響も深刻です。
②人的コストとストレス
コミュニケーションの負担が重いと従業員のストレスも増加します。ある調査では従業員の約9割がコミュニケーションの誤解を経験し、約6割がその不安によりメンタルヘルスへの悪影響を感じています。コミュニケーション負担が高まれば、離職率も上昇するリスクがあります。
③情報伝達の遅延・誤解による非効率
意思疎通のズレやミスは、手戻りや調整という余計なプロセスを生みます。製造業や建設業などでは、現場と部署間の連携不足が生産計画の乱れや品質低下を招き、大きな経済的損失につながっています。また、意思決定が遅れることによる機会損失も重大です。
④会議やチャットツールの運用負荷
頻繁に行われる会議や常時接続のチャット環境は、一見効率的ですが実際には生産性を下げています。従業員は週平均15時間以上を会議に費やしており、米国では不要な会議に年間約370億ドルの損失があるとの調査もあります。ツールの利便性が逆に従業員の集中力を奪っている現実も指摘されています。
⑤教育・研修費の増加
企業研修を提供している弊社が言うことではないかもしれませんが、研修費・教育費もコミュニケーションのコストになっています。研修や教育も「やらなくて済むなら、やらない方がいいもの」ではないでしょうか。それらに毎年多額の予算を割き、時間をかけて実施しています。企業によっては「研修をやることが目的」になってしまっているケースもあり、ここも大いに見直す価値があります。
コミュニケーションのコストを減らす
これらのコミュニケーションの非効率は企業の業績やプロジェクトの成功率にも大きな影響を及ぼします。米国の調査では、不十分なコミュニケーションにより大企業で年間約62億円、中小企業でも約4,400万円もの損失が出ていることが明らかになっています。プロジェクトの失敗原因の半分以上がコミュニケーション不足であり、企業文化や従業員のエンゲージメントにも悪影響を及ぼしています。
コミュニケーションコスト削減に成功した企業事例
一方、こうした問題に対し、積極的に改善策を取り入れ成功している企業もあります。
非同期コミュニケーション(GitLab)
GitLabは世界中の社員がリモートワークを行う中、社内ハンドブックをオンライン上で公開することでコミュニケーションを効率化しました。情報を一元化し、意思決定を迅速化しています。
会議削減(Shopify)
Shopifyは大胆に定期会議を一斉に削減し、累計32万時間の節約に成功しました。その結果、生産性が向上し、社員の満足度も改善しました。アマゾンの「2枚のピザルール」や「6ページメモ」も会議の効率化で有名な手法です。
ドキュメント文化の推進(Atlassian、トヨタ)
ドキュメント文化を推進することで、重複する説明や情報の伝達漏れを防ぎ、効率的なコミュニケーション環境を作っています。
未着手の解決策―「言語化スキル」の向上
これらの課題に対して、未だ十分に取り組まれていない解決策が「言語化スキル」の向上です。言語化スキルとは、自分の考えや意図を明確に整理し、それを相手に正確に伝える能力のことを指します。このスキルが低いと、どんなに良いアイデアや情報でも正しく伝わらず、誤解や再確認のコストが生じてしまいます。言語化スキルを企業が積極的に育成することで、従業員のコミュニケーション効率は飛躍的に向上し、無駄なコストを削減できるでしょう。
まとめ
コミュニケーションは重要ですが、無自覚に行うと重大なコストになります。まずは現状のコストを可視化し、適切な改善策を講じることが重要です。コミュニケーションを効率化することで、企業の競争力強化と従業員満足度の向上が同時に実現できます。ぜひ、自社のコミュニケーションを見直し、最適化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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