「会議で誰も積極的に発言しない!」をなくす方法

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ぼくは10年以上、様々な企業の会議改革に携わってきました。会議を実施しても発言をするのは一部の決まった人だけで、参加者のほとんどは「座っているだけ」というケースが多いです。また、人によっては「会議に出席をすることが仕事」と捉えている節もあり、発言しなければいけないという認識もありません。

最初は「日本人は発言が苦手だから」と思っていましたが、それは大きな誤解でした。実は会議での沈黙には明確な原因があります。そして、その解決法もシンプルなのです。

会議で意見が出ない最大の理由は「参加者が何を話せばいいのかわからない」ということ。つまり、リーダーが会議の目的と期待する発言の種類を明確に「言語化」していないのです。多くのリーダーは「メンバーが消極的」と誤解しがちですが、実はリーダー自身のコミュニケーションに課題があるケースがほとんどです。

ある大手メーカーでの例。毎週行われる開発会議で、常に数人の同じメンバーしか発言せず、リーダーは「チームの半分は当事者意識がない」と諦めていました。しかし、会議の目的と求める発言の種類を明確にしたところ、翌週から「発言しない」と思われていたメンバーからも積極的な意見が出るようになったのです。

会議を劇的に変える第一歩は、「会議には3つのタイプしかない」と理解すること。そして各タイプで求められる発言を言語化し、参加者に伝えることです。今回はその実践法をお伝えします。

「創造の場」「判断の場」「共有の場」—— 会議の3タイプを見極める

多くの会議が機能しない原因は、そもそも「この会議は何のためにあるのか」が不明確なことです。会議は大きく分けると以下の3タイプしかありません。

  1. 創造の場 —— 新しいアイディアや解決策を生み出す
  2. 判断の場 —— 複数の選択肢から最適なものを選び決定する
  3. 共有の場 —— 情報や状況認識をチーム内で揃える

特に日本企業では、これらが混在した「ごった煮会議」が多く、参加者は「自分は何を話せばいいのか」がわからないまま座っています。最初に「今日の会議は○○の場です」と宣言するだけで、参加者の意識は大きく変わります。

「創造の場」で発言を引き出す2つの言語化

アイディア創出の会議では、参加者は「何を言えばいいかわからない」と思っています。単に「自由に意見を」と言われても、漠然としすぎて考えられないのです。

ここでリーダーが言語化すべきは2つ。「考える方向性」と「考え方の型」です。

考える方向性の言語化

ここで考えなければいけないのは、まず「どんなコンテキストか?」です。

「新しいアイディアを考える」という目的の会議で会っても、なぜ新しいアイディアが必要になったのか、組織としてはどんな方向性で考えているのかを伝える必要があります。
新商品のアイディアにしても、既存商品とのシナジーを生みたいのか、これまでの顧客層が一気に離れていきそうだから新規ユーザーを急いで探さなければいけないのか、もしくはダイバーシティやSDGsなど世の中の風潮に合わせたものが欲しいだけなのか、など方向性を示してもらえなければ、考えようがありません。リーダーはそこを言語化していきましょう。

「新商品のアイディアを出して」と言われても、無限の可能性から考えることはできません。「現状の顧客層の不満を解消する方向で」「競合と差別化できる特徴を持たせる方向で」など、思考の範囲を示します。

ぼくがあるIT企業で行った会議では、「新サービスのアイディアを」という漠然とした問いかけから、「既存顧客の『時間がない』という課題を解決する方向で」と言語化した途端、アイディアが次々と出始めました。

考え方の型の言語化

「アイディアとは何か」という定義も重要です。ぼくは「アイディアとは、『異なる2つのものの掛け合わせ』」という定義をし、それに基づいて考えてもらっています。

そして次にアイディアの定義を共有します。そもそも「アイディアとは何か?」を理解していなければ、出しようがありません。「斬新なアイディア求ム!」と伝えても、出せないんです。まずはアイディアの定義をし、共有しましょう。

ぼくの定義は「アイディアとは、何かと何かの掛け合わせであること」です。たとえば、インターネットとフリーマーケットの掛け合わせがヤフオクであり、メルカリです。タクシーとメルカリ(個人間の取引)がUberですし、そのUberと出前の掛け合わせがUberEatsですね。

いいアイディアを出せと言っても、何を考えていいのかわかりません。まずは大きなコンテクスト(目指している方向性)の範囲内で、組み合わせを自由に発想してもらうと、どんどんアイディアが出てきます。

たとえば、ある会議では「教育×ゲーム」「健康×SNS」などのキーワードカードを作り、ランダムに組み合わせる手法を取り入れました。こうした「型」があると、参加者は考えやすくなります。

「判断の場」を機能させる「ゴール」の言語化

意思決定会議で最も重要なのは「何を基準に判断するのか」を明確にすることです。

飲料メーカーでの商品開発会議に携わったときの話です。「若者向け新商品のパッケージデザインどれがいい?」という議論で、「インパクト重視」派と「洗練さ重視」派で対立が起きていました。実は根本的な「このシリーズで目指すのはブランド認知度か高級感か」という判断基準が共有されていなかったのです。

リーダーがゴールを「今回はブランド認知度を最優先したい」と言語化したところ、議論は一気に収束しました。

判断会議では「何を達成したいのか」「何を重視して決めるのか」という基準を最初に言語化することが鍵です。そして議論が脱線しそうになったら「今の話は○○というゴールにどう関係しますか?」と軌道修正することも重要です。

「共有の場」を実りあるものにする「だから何?」の言語化

情報共有会議で最も無駄なのは「状況を伝えただけで終わる」ケースです。

実績の報告が会議でされることがあります。たとえば、「4月の売上は前年比98%でした」という感じです。しかしこれを伝えられても、「だから何?」となります。でも「だから何?」と聞き返すケースはほとんどなく、黙って聞き流しているのが大半ですね。

ここで必要なのは「意味付け」と「これからのアクション」を伝えることです。一般的に情報共有の会議では、文字通り状況の共有がされます。しかし、考えてみると状況を共有されただけでは、よくわかりません。

「状況は分かったけど、だから何?」となってしまうのです。そのため必要なのは、「状況報告と、なぜそれを共有したかの意味付け」「今後、どのようなアクションを取っていくか」になります。この2点を伝えてはじめて、参加メンバーがそれぞれ「今後何をしなければいけないか」をつかむことができ、発言もできるようになるのです。

共有会議で言語化すべきは「なぜその情報を共有するのか」と「その情報を受けて何をすべきか」です。

「4月の売上は前年比98%でした。これは新規顧客の減少が主因です。各部署で新規顧客獲得策を考え、来週の会議で提案してください」

このように言語化することで、参加者は情報の意味と自分のアクションが明確になります。

明日から実践できる「会議言語化」3ステップ

会議改革は難しそうに思えますが、以下の3ステップで簡単に始められます。

  1. 会議冒頭宣言 — 「今日は○○の場です」と3タイプのどれかを伝える
  2. 期待発言明示 — タイプ別に「皆さんには○○な発言をお願いします」と具体的に伝える
  3. 軌道修正発動 — 発言・議論がズレたら「それも大事な視点かもしれませんが、今回のゴールは○○でしたね」と修正する

たった3つのステップですが、これで会議の雰囲気は劇的に変わります。大切なのは、参加者が「何を、どう発言すればいいか」を明確にイメージできるようにすることです。

静かな会議室に活発な議論を呼び起こすのは、高度なファシリテーション技術ではなく、リーダーによる「言語化」の力なのです。明日の会議から、ぜひ試してみてください。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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