採用応募数を増やす! 面接でミスマッチを防ぐ!企業の発信方法と質問法

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「優秀そうに見えた候補者が入社後に早期退職してしまう」「面接では問題なかったのに、働き始めてから価値観の違いが表面化する」「お互いに『こんなはずじゃなかった』という状況になってしまう」…。もしくは、「そもそも応募が少なくて基準に達する人材が採用できない」。採用面接でこんな悩みを抱えていませんか?

多くの採用担当者が、候補者のスキルや経験を重視して、「志望動機は何ですか?」「将来のキャリアプランを教えてください」といった表面的な質問で面接を進めています。しかし実は、そのアプローチでは候補者の本当の価値観や働き方への考えを把握できず、入社後のミスマッチを防ぐことができません。

また、そもそも自社を魅力的にアピールすることができず、応募者を増やすことができません。合同説明会にブースを出展しても、エージェントに依頼しても、なかなか応募数が増えていきません。

本記事では、2000社をサポートし累計3万人を指導してきたぼくの経験から、採用面接で価値観のすり合わせを効果的に行う方法をお伝えします。候補者の「べき論」と「だって論」を正しく聞き出し、自社のカラーを適切に伝えることで、入社後のミスマッチを大幅に減らすことができるでしょう。

多くの面接官が見落とす「だって論」の落とし穴

価値観のすり合わせを行おうとするとき、多くの採用担当者が「理想的な働き方について聞けば十分」と考えて、次のような間違ったアプローチを取ってしまいます。

理想論ばかりを質問する
「仕事で大切にしていることは何ですか?」「どんな働き方を理想としていますか?」といった質問で、候補者の「べき論」だけを聞き出そうとする。

会社の良い面だけをアピールする
自社の魅力的な制度や福利厚生ばかりを説明して、「こんな素晴らしい会社です」という一方的なPRに終始する。

具体的な働き方の実態を伝えない
「風通しの良い職場です」「ワークライフバランスを重視しています」といった抽象的な表現で会社を紹介し、実際の働き方の詳細を説明しない。

これらのアプローチが問題なのは、候補者の「本音の部分」と会社の「リアルな実態」を共有できていないからです。

人間は誰しも、「仕事はこうあるべきだ」という理想(べき論)を持っています。しかし同時に、「でも自分には家庭の事情があるから…」「体調面で無理はできないから…」「プライベートも大事にしたいから…」といった個人的な事情や制約(だって論)も抱えています。面接で理想論だけを聞いていると、この「だって論」の部分が見えず、入社後に「実は毎日残業は厳しいです」「実は出張が多いのは困ります」といった問題が発生してしまうのです。

また、会社側も「良い面」だけを伝えていると、候補者は「この会社なら自分の理想的な働き方ができる」と期待を膨らませてしまいます。その結果、入社後に現実とのギャップに直面し、「こんなはずじゃなかった」という失望につながってしまいます。

候補者の「べき論」と「だって論」を引き出す言語化アプローチ

では、どうすれば候補者の本当の価値観と働き方の希望を把握できるのでしょうか。答えは「言語化スキル」を使って、「べき論」と「だって論」の両方を聞き出すことにあります。

「べき論」を聞き出す質問技法

まず、候補者の仕事に対する理想や価値観(べき論)を明確にします。

具体的な体験から価値観を探る
「これまでの職場で、『この職場は本当に良いな』と感じた瞬間はありますか?その時、どんなことが起きていましたか?」

理想的な一日を描いてもらう
「もし理想的な働き方ができるとしたら、朝出社してから帰るまで、どんな一日を過ごしたいですか?」

これらの質問により、候補者が仕事に求めている本質的な価値観を理解できます。

「だって論」を自然に聞き出す技法

次に、候補者の個人的な事情や制約(だって論)を聞き出します。ここが最も重要で、かつ難しいポイントです。

過去の困った体験から制約を探る
「逆に、これまでの職場で『これはちょっとおかしいな』と感じたことはありますか?その時、どんな状況でしたか?」

現実的な状況を想定した質問
「例えば、繁忙期で残業が続いたとします。そして上司から「忙しいからみんなで頑張るべき」と言われたとします。もしその時に気分が乗らないとしたら、どんな事情が背景にありますか?」

プライベートとの両立について
「お仕事とプライベートのバランスについて、「そんなことは会社から指示されたくない、言われたくない」という点はありますか? 例えば、休日の過ごし方や住む場所など…」

「だって論」を言語化するコツ

候補者が「だって論」を話しにくそうにしている場合は、以下のような言語化支援を行います。

共感を示しながら整理する
候補者:「家族の送り迎えがあって…」
面接官:「お子さんの送り迎えをされているんですね。ということは、朝の8時前と夕方の6時以降は、基本的にお家にいる必要があるということでしょうか?」

制約を前向きに捉え直す
「家族を大切にされているからこそ、時間の使い方にメリハリをつけて、集中して働きたいということですね」

このように言語化することで、候補者は自分の制約を「わがまま」ではなく「大切にしたい価値観」として表現できるようになります。

自社のカラーを正直に伝える技法

候補者の価値観を把握したら、次は自社の実態を正直に伝える番です。

「許されること」を具体的に伝える

働き方の自由度
「自由な社風です」と伝えても、具体的なイメージを持つことはできません。そして多くの会社が「うちは自由です」というので、真剣に受け取ってもらえません。これに限らず、会社のいい点を伝えようとしても「建前」にしか聞こえず、本気にしてもらえないケースは多々あります。

ではどうすればいいのか? それは自社が持っているべき論と合わせて、「うちの会社で許されていること」を語ることです。

「うちの会社では、こんなことが許されています」という形で、具体的な事例を伝えます。たとえば、

「直行直帰は基本的にOKです。実際に営業の田中さんは、お子さんの保育園のお迎えがあるので、客先から直接帰宅することが多いですね」
「服装についても、お客様と会わない日はTシャツやジーンズで出社している社員もいます」
「長期休暇も取りやすい環境で、昨年は経理の佐藤さんが2週間連続で休暇を取って海外旅行に行きました」

こう伝えることで、本音が見えてきますし、一般的にはNGと思われそうな行為でも許されるんだとイメージを持つことがあります。
(ちなみにぼくの会社では、フルリモートで働けますし、2週間の休みを取って海外旅行に行くことも可能です。)

「許されないこと」も正直に伝える

同時に、会社が持っている「べき論(会社として譲れない部分)」も伝えます。

コアタイムや必須の会議
「ただし、毎週火曜日の10時からの全体会議は、全員参加が原則です」
「お客様対応の関係で、平日の9時から17時の間は連絡が取れる状態でいてもらう必要があります」

繁忙期の対応
「決算期の3月は、どうしても残業が増える傾向があります。この期間は月30-40時間程度の残業をお願いすることもあります」

価値観すり合わせの実践的な会話例

ぼくがサポートしたB社の採用担当者は、以下のような会話で価値観のすり合わせを行っています。

候補者の「だって論」を聞き出す場面
面接官:「これまでのお仕事で、『この働き方はちょっと自分には合わないな』と感じたことはありますか?」
候補者:「前職では、急な残業や休日出勤が多くて…子供がまだ小さいので、保育園のお迎えに間に合わないことがよくありました」
面接官:「お子さんのお迎えの時間があるんですね。具体的には、何時頃までにはお迎えに行く必要がありますか?」
候補者:「18時30分には保育園にいないといけないので、遅くとも18時には会社を出たいです」
面接官:「わかりました。お子さんを大切にされているからこそ、時間をしっかり管理して働きたいということですね」

自社のカラーを伝える場面

面接官:「弊社の働き方についてお話しますと、基本的に18時には帰れる環境です。
    実際に、営業部の山田さんも小学生のお子さんがいらっしゃいますが、ほぼ毎日18時前には退社されています」
面接官:「ただし、月末の締め作業の時期は、どうしても19時頃まで残業をお願いすることがあります。
    その場合は事前にお伝えしますし、保育園の延長保育を利用していただくことになりますが、それは可能でしょうか?」
候補者:「月末だけでしたら、延長保育を利用すれば大丈夫です」

このような会話により、お互いの期待値を事前に調整することができ、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

まとめ

採用面接で最も重要なのは、候補者のスキルや経験を評価することではありません。お互いの価値観や働き方への考えを正直に共有し、入社後にwin-winの関係を築けるかどうかを見極めることです。

そのためには、候補者の「べき論」だけでなく「だって論」も含めた本音を聞き出し、自社の「許されること」と「許されないこと」を正直に伝える必要があります。言語化スキルを使って、この価値観のすり合わせを丁寧に行うことで、入社後のミスマッチを大幅に減らすことができるでしょう。

明日からの面接で、ぜひ候補者の「だって論」に耳を傾け、自社のリアルな働き方を伝えてみてください。お互いにとって満足度の高い採用活動が実現できるはずです。

FAQ

Q: 候補者の「だって論」を聞き出すとき、どんな雰囲気作りが大切ですか? A: 最も重要なのは「制約があることは当然だ」という姿勢を示すことです。「誰にでも大切にしたいことや事情がありますよね」という前置きをして、判断されているのではなく理解しようとしてもらっているという安心感を与えることが大切です。

Q: 自社の「許されないこと」を伝えて、候補者が引いてしまった場合はどうすればよいですか? A: それは正常な反応です。価値観が合わない候補者に無理に入社してもらっても、お互いに不幸になります。むしろ、面接の段階で正直に伝えることで、本当に自社に合う人材を見つけることができると考えてください。

Q: 「だって論」を聞いても、候補者が本音を話してくれない場合はどうしたらよいですか? A: 無理に聞き出そうとせず、まずは面接官側から会社の実態を正直に話してみてください。「実はうちの会社はこんな感じで…」と先に開示することで、候補者も安心して本音を話してくれるようになることが多いです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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