キャリアが描けなくなった30代がしてしまっていること

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このまま今の会社にいていいのだろうか」「自分の市場価値ってどのくらいなんだろう」「10年後の自分が全く想像できない」…30代になって、こんな不安を抱えている方は非常に多いのではないでしょうか。

そこで多くの方が「キャリア設計セミナーに参加しよう」「転職エージェントに相談しよう」「とりあえず資格を取ろう」と考えて、様々な行動を起こされているかと思います。しかし、残念ながらそれらの手法だけでは根本的な解決に至らないケースが大半です。

ぼくはこれまで2000社をサポートし、累計3万人を指導してきましたが、キャリアに迷いがなくなった方には共通点がありました。それは「自分の価値観や強み、目標を正確に言語化する力」を持っていることです。

NG例)外部の情報収集ばかりに頼ってしまう

多くの30代ビジネスパーソンが陥りがちなのが、「とにかく情報を集めれば答えが見つかる」と考えて、外部からの情報収集に時間を費やしてしまうことです。

具体的には、こんなことをしていませんか?

転職サイトを毎日チェックする
「もっと良い会社があるかもしれない」と考えて、転職サイトを見る時間が増えている。しかし、募集要項を見ても「本当に自分に合うのか」「今より満足できるのか」の判断ができない。

キャリア診断ツールを繰り返し使う
適性診断や強み診断を何度も受けて、「自分の向いている仕事」を探そうとする。しかし、診断結果が毎回微妙に違ったり、結果を見ても具体的にどう行動すればいいかわからない。

業界研究に時間をかけすぎる
「成長業界に転職すれば安心」と考えて、市場規模や将来性を詳しく調べる。しかし、その業界で自分が何をしたいのか、どんな貢献ができるのかが明確でない。

資格取得に走る
「スキルアップすればキャリアが開ける」と考えて、TOEICの点数を上げたり、MBAを取得したりする。しかし、その資格をどう活かすのか、本当に必要なのかを十分に検討していない。

人脈作りに奔走する
「人とのつながりが重要」と考えて、異業種交流会やセミナーに頻繁に参加する。しかし、表面的な関係しか築けず、具体的なキャリアの方向性は見えてこない。

これらの活動自体は決して悪いことではありません。しかし、多くの場合、これだけでは根本的な解決に至らないのです。なぜなら、最も重要な「自分自身の軸」が明確になっていないからです。

外部の情報をいくら集めても、「自分が何を重視するのか」「どんな働き方をしたいのか」「何にやりがいを感じるのか」が曖昧なままでは、適切な判断はできません。まるで、目的地を決めずに地図を眺めているようなものです。どんなに詳しい地図を持っていても、どこに向かえばいいのかわからなければ、永遠に迷子のままなのです。

なぜ自分の軸を言語化できないのか

では、なぜ多くの人が自分の価値観や目標を明確に言語化できないのでしょうか。

時間に追われて振り返らずに仕事を続けてきてしまった
多くの人は、就職活動の時に一度は自己分析をしたものの、その後は日々の業務に追われて、改めて自分と向き合う時間を取ってきませんでした。気がつくと10年以上が経ち、「なんとなく」仕事を続けてきた結果、自分の本当の価値観がわからなくなってしまっているのです。

新卒の頃は「安定した会社に入りたい」「やりがいのある仕事をしたい」といった漠然とした希望しか持っていませんでした。しかし30代になった今、実際に働いてみて初めて「安定とは何か」「やりがいとは何か」がより具体的に見えてきているはずです。しかし、それを改めて整理する機会がないため、モヤモヤした状態が続いているのです。

周囲と比較してしまう
SNSで同期の昇進報告を見たり、転職した友人の話を聞いたりすると、「自分も何かしなければ」という焦りが生まれます。しかし、この焦りは他人との比較から生まれているため、自分本来の価値観とは関係ありません。

「あの人は年収が上がった」「この人は大手企業に転職した」という外部の情報に振り回されて、本当は自分が何を大切にしたいのかが見えなくなってしまいます。

言語化することの難しさを避けている
自分の気持ちや価値観を正確に言葉にするのは、実は非常に難しい作業です。「なんとなくモヤモヤする」「このままでいいのか不安」といった感情は誰でも感じますが、それを具体的な言葉に落とし込むには時間と労力が必要です。

多くの人は、この面倒な作業を避けて、手っ取り早く外部の情報に答えを求めてしまいます。しかし、この作業を避けている限り、根本的な解決は得られません。

言語化がもたらす具体的な効果

では、自分の価値観や目標を正確に言語化できるようになると、どのような変化が生まれるのでしょうか。

判断基準が明確になる
「転職すべきかどうか」「この仕事を続けるべきかどうか」といった判断をする際、明確な基準を持てるようになります。たとえば「家族との時間を最優先したい」ということが言語化できていれば、年収は下がっても残業の少ない会社への転職が正解だとわかります。

無駄な情報収集が減る
自分の軸が明確になると、本当に必要な情報だけを効率的に収集できるようになります。転職サイトを見ても、自分の条件に合わない求人は最初から除外できるため、時間の無駄がなくなります。

面接や転職活動での説得力が向上する
自分の価値観や目標が言語化できていると、面接で「なぜ転職したいのか」「なぜ弊社を志望するのか」といった質問に対して、一貫性のある説得力のある回答ができます。

現在の仕事への取り組み方が変わる
転職しないという判断をした場合でも、自分の目標が明確になることで、現在の仕事への取り組み方が変わります。「この経験は将来の○○に活かせる」という視点で仕事ができるようになるため、やりがいを感じやすくなります。

実践的な自己言語化メソッド

ここからは、具体的にどのように自分の価値観や目標を言語化していけばいいのかをお伝えします。

価値観の言語化ステップ

Step1: 過去の体験を振り返る
れまでの仕事で「特に充実感を感じた瞬間」を3つ以上書き出してみてください。そして、それぞれについて「なぜ充実感を感じたのか」を具体的に分析しましょう。

Step2: 不満や違和感を言語化する
現在の仕事や職場に対して感じている不満や違和感を、遠慮なく書き出してみてください。「人間関係が嫌」「給料が安い」といった表面的なレベルではなく、「なぜそれが嫌なのか」まで突き詰めて考えてみましょう。

Step3: 理想の働き方を具体化する
「もし制約が一切なかったら、どんな働き方をしたいか」を具体的に描いてみてください。勤務時間、職場環境、仕事内容、人間関係など、できるだけ詳細に言語化しましょう。

強みの言語化手法

周囲からのフィードバックを収集する
同僚、上司、部下、取引先など、様々な立場の人に「私が周囲に貢献できていることって、何だと思いますか?」と直接聞いてみてください。「強み」という言葉は使わず、「貢献できているポイント」を聞くようにしましょう。自分では気づかない場合が多いものです。

成果を上げた時の行動パターンを分析する
これまでに「うまくいった」「成果を上げた」と感じるプロジェクトを思い出し、その時に自分がどのような行動を取ったのかを詳細に振り返ってみてください。

苦手なことから逆算する
自分が苦手なことや避けたいことを明確にすることで、逆に得意なことや向いていることが見えてきます。

目標設定の言語化プロセス

5年後の理想像を描く
「5年後、どんな自分になっていたいか」を具体的に言語化してみてください。ただし「年収○○万円」といった数字だけでなく、「どんな価値を提供している人になりたいか」「どんな影響を与えている人になりたいか」という質的な面も重視しましょう。

そのために必要な要素を分解する
5年後の理想像を実現するために、「どんなスキルが必要か」「どんな経験が必要か」「どんな人脈が必要か」を具体的にリストアップしてください。

現在とのギャップを明確化する
理想の自分と現在の自分の間にあるギャップを具体的に言語化し、そのギャップを埋めるためのアクションプランを立てましょう。

言語化スキルを活かしたキャリア設計の実践例

実際に自己言語化に取り組んだ結果、キャリアの方向性が明確になった方の事例をご紹介します。

事例1: メーカー営業職(32歳男性)

言語化前の状況
「なんとなく営業が向いていない気がする。転職したいけど、何をしたいかわからない」

自分の想いを言語化した結果
「人の役に立っていることを実感できる仕事がしたい。営業は売上数字しか評価されず、お客様がどう喜んでいるかが見えにくいことに違和感を覚えていた」

貢献ポイントの言語化結果
「複雑な情報を整理して、相手にわかりやすく説明できている。そうすることで、より効率的に、よりお互いのストレスなく業務が薦められるようになっている」

キャリア選択
同じ会社内でカスタマーサクセス部門に異動。営業で培った説明スキルを活かしながら、お客様の成功を直接サポートする仕事に転換。結果として満足度が大幅に向上。

事例2: 人事部採用担当(35歳女性)

言語化前の状況
「人事の仕事は好きだけど、このまま一つの会社にいて大丈夫か不安。転職エージェントに相談しても、『今の条件が良いから転職しない方がいい』と言われて迷っている」

自分の想いを言語化した結果
「多様な業界や職種の人と関わることで、自分の視野を広げたい。一つの会社の人事だけでは、限られた範囲でしか経験を積めないことに物足りなさを感じている」

貢献ポイントの言語化結果
「相手の潜在的なニーズを聞き出すのが得意。面接でも、応募者の本音を引き出すことができる」

キャリア選択
人材紹介会社のキャリアコンサルタントに転職。これまでの人事経験を活かしながら、様々な業界の人と関わることで視野を広げることができた。年収は一時的に下がったが、長期的なキャリア満足度は大幅に向上。

継続的な自己言語化の習慣

言語化は一度やって終わりではありません。定期的に見直すことで、より精度の高いキャリア設計ができるようになります。

月次振り返り習慣

今月の充実度を5段階で評価
毎月末に、その月の仕事への充実度を5段階で評価し、その理由を言語化してみてください。

価値観の変化をチェック
半年前に言語化した価値観と現在の気持ちを比較し、変化があれば更新しましょう。

新たな発見を記録
仕事を通じて発見した新たな強みや興味のある分野があれば、随時記録していきましょう。

年次キャリア見直し

1年間の成長を振り返る
その年に身につけたスキル、得た経験、達成した成果を具体的に言語化してみてください。

来年の目標を再設定
現在の状況を踏まえて、来年の目標を具体的に言語化し直しましょう。

キャリアプランの軌道修正
当初の5年計画と現在の状況を比較し、必要に応じて計画を修正しましょう。

まとめ

30代でキャリアに迷いを感じる根本的な原因は、情報不足ではありません。自分の価値観や強み、目標を正確に言語化できていないことが、多くの迷いの原因となっています。外部の情報をいくら集めても、自分の軸が明確でなければ適切な判断はできません。まずは自分自身と向き合い、これまでの経験や現在の気持ちを丁寧に言語化することから始めましょう。

言語化ができれば、転職するかどうかの判断、転職先の選択、現在の仕事への取り組み方など、あらゆる場面で迷いがなくなります。そして何より、自分らしいキャリアを歩むことができるようになります。まずは今日から、「今の仕事で一番充実感を感じる瞬間はいつか?」を5分間考えて、紙に書き出してみてください。そして「なぜその瞬間に充実感を感じるのか」まで深掘りしてみてください。

ぼくが2000社をサポートしてきた経験から断言できるのは、自己言語化こそが、キャリアの迷いを根本的に解決する最も確実な方法だということです。あなたも今日から実践してみてください。きっと自分らしいキャリアの方向性が見えてくるはずです。

よくある質問

Q: 自分の価値観がよくわからない場合はどうすればいいですか? A: まずは「絶対に嫌なこと」から考えてみてください。嫌なことの反対が、あなたの価値観である可能性が高いです。また、子供の頃に夢中になったことや、時間を忘れて取り組めることからもヒントが得られます。

Q: 言語化しても、それが本当に正しいかわからないのですが? A: 完璧である必要はありません。まずは現時点での「仮説」として言語化し、実際の行動を通じて検証していけばよいのです。間違っていたら修正すればよいだけです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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