年上部下にフィードバックできるようになる言語化テクニック

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年上の部下に対して厳しいフィードバックを行うとき、「相手の気持ちを傷つけないように」と配慮して、「もう少し○○の部分を工夫していただけると…」「皆さんにお願いしているのですが…」といった曖昧な表現を使っていませんか?

実は、多くの管理職が「相手を思いやるため」と考えてとっている遠回しなアプローチが、かえって問題を深刻化させています。年上部下との関係が悪化し、最終的には感情的な爆発につながるケースも少なくありません。

2000社をサポートし、累計3万人を指導してきたぼくの経験から、言語化スキルを活用した年上部下への効果的なフィードバック方法をご紹介します。

「察してもらおう」とする曖昧なフィードバックの問題点

年上部下へのフィードバックで最も多い間違いが、言語化されていない曖昧なコミュニケーションです。多くの管理職が「相手のプライドを傷つけないように」という配慮から、このような方法を選択しています。

言語化されていない指示の具体例

「もう少し○○の部分を工夫していただけると……」
「皆さんにお願いしているのですが……」
「もうちょっといい感じにしておいてください」

これらの表現は、相手に「察してもらおう」とする典型的なパターンです。しかし、言語化とは「明確化」です。そう考えると、これらは言葉にはなっていますが、まったく言語化されていません。

なぜ曖昧なフィードバックが問題なのか

第三者を通じて間接的に伝える、他の事例を引き合いに出して「気づいてもらう」といった手法を使っても、あまり意味はありません。年上の部下はキャリアは長く、ある程度の経験があるため、「自分のことではない」と解釈する可能性が高いからです。

さらに深刻なのは、このような曖昧なコミュニケーションが続くことで信頼関係が悪化することです。年上の部下は、管理職が何かを言いたがっているが直接言わない状況を敏感に察知し、「自分は信頼されていない」という不信感を抱くようになります。

問題が解決されない悪循環

問題が解決されないまま時間が経過すると、管理職側にもストレスが蓄積されます。「何度も遠回しに伝えているのに改善されない」という苛立ちから、最終的には感情的な爆発につながるケースも少なくありません。

これは当初配慮しようとした相手のプライドを、結果的により大きく傷つけることになってしまいます。

年上部下の心理を理解した言語化アプローチ

年上部下に対する効果的なフィードバックを行うためには、まず相手の心理状態を深く理解し、それを明確に言語化することが重要です。

なぜ年上部下は防御的になりやすいのか

年上の部下が防御的になる背景には、複数の心理的要因があります。最も大きな要因は、「年下の上司に指摘される」ことに対するプライドの問題ですよね。これらの感情は正当なものであり、リーダーは相手の立場を理解した上で、適切な言語化を行う必要があります。

「SBI+I」モデルを活用した言語化フレームワーク

効果的なフィードバックの基本となるのが「SBI+I」モデルです。これは言語化の具体的な型として活用できます。

Situation(状況): 「昨日の午後3時からの企画会議において」 具体的な時間と場所を明確に示すことで、相手も同じ場面を想起しやすくなります。

Behavior(行動): 「資料の準備が間に合わず、口頭での説明のみとなりました」 観察した具体的な行動を客観的に述べます。推測や解釈を含めず、実際に見聞きした事実のみを述べることが重要です。

Impact(影響): 「そのため、参加者が内容を十分に理解できず、重要な決定を次回に持ち越すことになりました」 その行動がもたらした結果や影響を具体的に説明します。

Intention(意図): 「次回からは事前に資料を準備していただき、より生産的な議論ができるようにしたいと考えています」 改善への期待や今後の方向性を前向きに伝えます。

年上部下の自尊心を保つ言語化技術

年上部下とのコミュニケーションで特に重要なのが、相手の自尊心を保ちながら改善を促す言語化技術です。

協力をお願いする姿勢を伝える
「改善してください」という指示的な表現ではなく、「○○の件でお力をお借りしたいのですが」といった協力を求める表現を使用します。

一緒に解決する共同作業の姿勢を伝える
「この課題について、○○さんのご経験も活かしながら、一緒に最適な方法を見つけていきたいと思います」といった表現により、対立的ではなく協力的な関係を築くことができます。

相手の立場への理解を示す
「環境がどんどん変わる中で大変だと思いますが」「○○さんの経験からすると違和感があるかもしれませんが」といった前置きにより、相手への配慮を示すことができます。

「そのために、何をする?」を3回繰り返す

年上部下への効果的なフィードバックを実現するためには、曖昧な指示を明確な行動レベルまで言語化する技術が不可欠です。

曖昧な指示を明確にする問いかけ手法

多くの組織で使われがちな「顧客に響く資料にしてください」「うまく調整しておいてください」という指示は、曖昧すぎて何をどうしたらいいのかわかりません。ここで活用するのが、「そのために、何をする?」を3回繰り返すという言語化の型です。

1回目の問いかけ
「顧客に響く資料にする。そのために何をする?」
→「そのために、見込み顧客に課題をヒアリングする」

2回目の問いかけ
「顧客に課題をヒアリングする。そのために何をする?」
→「そのために、先方にアポを取って課題を伺う場をセッティングする」

3回目の問いかけ
「先方にアポを取って課題を伺う場をセッティングする。そのために何をする?」
→「競合他社の課題とそれを克服した手法をまとめた資料を作って持参する」

この手法により、もともとの「顧客に響く資料にして」では何もできなかったメンバーが、明確な行動レベルでの指示を理解し、実行できるようになります。

定性的な指示を明確にする「練習メニュー」の提示

「仕事の質を上げる」といった定性的な目標を言語化する場合、スポーツの監督のように「練習メニュー」を提示することが効果的です。

クライアントに認められる質のいい提案書を作れるようになる練習メニュー例

・資料作りがうまい先輩が作った資料をデータでもらい、デザインを変えず文章だけ自分の提案内容に変えてみる これを1週間に1回やってみてください
・ビジネス雑誌の記事の見出しで、自分が好きなキャッチコピーを毎日3つ書き出してみてください
・クライアントに「最近、一番イラっとしたことは何ですか?」と質問して、答えを書き留めてください

このように、結果ではなく「結果を出せるようになるための毎日の行動」を具体的に示すことで、年上部下も納得して取り組むことができます。

軌道修正における「3つの要素」の言語化

すでに実施されているアクションを軌道修正するためには、以下の3つを明確に言語化することが重要です。

1)焦点を当てるべきポイント
何に焦点を当てたら結果が変わるか

2)取るべきアクション
具体的に何をしたら結果が変わるか

3)アクションの適切な量
それをどれくらいやれば結果が変わるか

例えば、営業成績が芳しくないメンバーに対して:
焦点: クライアントが自社商品を必要だと思ってくれるような情報を渡すこと
アクション: メールでもいいから頻繁に情報を送ること
: 週に2回、関連する業界情報をメールで送る

このように具体化することで、メンバーは明確な方向性を持って行動できるようになります。

組織全体での言語化文化の構築

個人的なスキル向上だけでなく、組織全体として年上部下を効果的にマネジメントする体制を構築することが、長期的な成功には不可欠です。

管理職全体の言語化スキル向上

組織全体で年上部下マネジメントを成功させるためには、管理職全体の言語化スキルを向上させることが不可欠です。

まず、管理職向けの言語化研修プログラムを実施します。年上部下特有の心理的特徴を理解し、適切な言語化技術を習得する研修を定期的に開催します。ロールプレイングやケーススタディを通じて、実践的なスキルを身につけることができます。

また、管理職同士の情報共有と学習の機会を設けます。年上部下マネジメントの成功事例や失敗事例を共有し、互いに学び合う環境を作ります。この際、具体的な言語化の例やフレーズを共有することで、実践的な学習を促進できます。

成功事例の言語化と横展開

組織内で生まれた年上部下マネジメントの成功事例を分析し、他の部署や管理職に横展開することで、組織全体のレベル向上を図ります。成功事例の分析では、特に使用された言語化技術に注目します。どのような表現や伝え方が効果的だったのか、どのタイミングでどのような言葉を使ったのかを詳細に記録し、分析します。

そして、これらの成功パターンを他の管理職が活用できる形にまとめます。「年上部下への効果的なフィードバック例文集」や「場面別コミュニケーションガイド」といった実践的なツールを作成し、組織内で共有します。を成功させるためには、管理職全体の言語化スキルを向上させることが不可欠です。

まず、管理職向けの言語化研修プログラムを実施します。年上部下特有の心理的特徴を理解し、適切な言語化技術を習得する研修を定期的に開催します。ロールプレイングやケーススタディを通じて、実践的なスキルを身につけることができます。また、管理職同士の情報共有と学習の機会を設けます。年上部下マネジメントの成功事例や失敗事例を共有し、互いに学び合う環境を作ります。この際、具体的な言語化の例やフレーズを共有することで、実践的な学習を促進できます。

さらに、外部専門家によるコーチングやメンタリングを活用することも効果的です。年上部下マネジメントの専門知識を持つコーチから、個別的な指導を受けることで、各管理職の状況に応じたスキル向上を図ることができます。

成功事例の分析と横展開

組織内で生まれた年上部下マネジメントの成功事例を分析し、他の部署や管理職に横展開することで、組織全体のレベル向上を図ります。成功事例の分析では、特に使用された言語化技術に注目します。どのような表現や伝え方が効果的だったのか、どのタイミングでどのような言葉を使ったのかを詳細に記録し、分析します。

そして、これらの成功パターンを他の管理職が活用できる形にまとめます。「年上部下への効果的なフィードバック例文集」や「場面別コミュニケーションガイド」といった実践的なツールを作成し、組織内で共有します。また、成功した管理職が他の管理職に対して実際の経験を共有する機会を設けます。実体験に基づいた学習は、理論だけでは得られない実践的な知識を提供し、より効果的な学習を可能にします。

まとめ

年上部下への厳しいフィードバックは、多くの管理職が直面する難しい課題ですが、適切な言語化スキルを身につけることで、必ず解決できる問題です。重要なのは、「遠回しに伝える」「察してもらう」といった曖昧なコミュニケーションから脱却することです。相手の心理を理解した上で、具体的で建設的なフィードバックを行うことが不可欠です。

実践すべき言語化テクニック

1. SBI+Iモデルの活用 状況・行動・影響・意図を明確に言語化する
2. 「そのために、何をする?」を3回繰り返す 曖昧な指示を具体的な行動レベルまで落とし込む
3. 相手の自尊心を保つ言語化 協力を求める姿勢、共同作業の姿勢、相手への理解を示す
4. 継続的なフォローアップ 小さな改善の承認と支援的な姿勢の言語化

組織レベルでの取り組み

また、個人のスキル向上だけでなく、組織全体として年上部下が活躍できる環境を整備することも重要です。管理職全体の言語化スキル向上、成功事例の共有、適切なモチベーション維持システムの構築により、組織として持続可能な年上部下マネジメント体制を構築することができます。

ぼくがこれまで2000社をサポートし、3万人を指導してきた経験から言えることは、言語化スキルの向上こそが、年上部下マネジメントの成功の鍵だということです。自分の考えを正確に、かつ相手に配慮した形で伝える能力を身につけることで、どのような困難な状況でも建設的な解決策を見つけることができるのです。

今日から、まずは一人の年上部下との関係改善に取り組んでみてください。「そのために、何をする?」を3回繰り返すことから始めて、具体的で建設的なフィードバックを実践していけば、必ず良い結果を得ることができるはずです。言語化とは「明確化」です。曖昧なコミュニケーションを明確にすることで、年上部下との信頼関係を築きながら、必要な改善を実現していきましょう。

FAQ(よくある質問)

Q: 年上部下から反発された場合、どのように対応すべきですか?
A: 反発が生じた場合は、まず相手の感情を受け止め、「○○さんがそう感じられるのは理解できます」と共感を示すことが重要です。その上で、フィードバックの意図を再度説明し、「一緒に解決していきたい」という協力的な姿勢を言語化して伝えます。感情的にならず、冷静に対話を続けることで、多くの場合は理解を得ることができます。

Q: 年上部下のプライドを傷つけずにフィードバックするコツはありますか?
A: 最も効果的なのは、相手の経験や能力を認めた上で改善点を伝えることです。「○○さんの豊富な経験があるからこそ、さらに良くなると思うのですが」といった前置きを使用し、能力の否定ではなく、さらなる向上への期待であることを明確にします。また、問題ではなく「機会」として言語化することも効果的です。

Q: 年上部下との一対一の面談で話しやすい雰囲気を作るにはどうすればよいですか?
A: まずは相手の関心事や近況から会話を始め、リラックスした雰囲気を作ります。業務の話に入る前に、「最近お疲れのようですが、いかがですか?」といった気遣いの言葉をかけることで、相手も話しやすくなります。また、自分も適度に個人的な話をすることで、対等な関係であることを示すことができます。重要なのは、相手が「察してもらおう」とするのではなく、明確に言語化されたコミュニケーションを心がけることです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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