「教えない・育てない職場」には人材が定着しない!

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「最近の若者はすぐ辞める」——そんな嘆きをよく耳にします。しかし本当に問題なのは「辞める若者」なのでしょうか。

2020年以降、多くの調査を見ると、問題は違うところにあると言わざるを得ません。本当の問題は、「ちゃんと教えてもらえない」「成長実感が得られない」といった教育不足です。実際、若手社員の離職理由として最も多いのがこの要因です。

これは新卒に限らず、即戦力として採用される中途社員でも同様です。誰もが入社直後は新しい環境に戸惑い、不安を抱えています。そのときに、「仕事は見て覚えろ」「聞かれたら答える」といった受け身の姿勢では、早期離職を防ぐことはできません。

企業がどれだけ採用に力を入れても、職場が「教えること」を放棄すれば、せっかくの人材も根付かずに去っていきます。いま、企業に問われているのは「教える力」です。この記事では、最新の調査結果をもとに「教えない職場がなぜ辞められるのか」、そして「教える力を組織にどう育むか」について考察します。

1. 教えられない職場は、若手に見限られる

OpenWorkさんの調査では、3年以内に辞めたZ世代の退職理由のトップが「成長実感の欠如」でした。特に新卒で入った若手社員にとって、仕事を通じて自分が成長できているかどうかは、職場にとどまるか否かを決める重要な基準です。

逆に言えば、仕事の進め方を教わらないまま放置されると、「ここにいても意味がない」と感じ、早期離職につながります。

また、厚労省のデータでは、企業規模が小さくなるほど新卒3年以内の離職率は高くなる傾向があります。これは「育成の余裕がない」「教育の仕組みが整っていない」ことと関係しているかもしれません。小規模な組織ほど現場任せになりやすく、「教える人も教えられないまま育った」という負の連鎖に陥りやすいのも想像に難くありません。

2. 中途社員も「即戦力神話」の被害者

中途採用者は「即戦力」として期待されがちですが、会社の文化や業務フロー、使うツールが違えば、当然戸惑うものです。しかし実際には「説明なしで業務を任される」「誰に聞けばいいか分からない」といったオンボーディング不足が横行しており、離職理由としても上位に挙がっています。

リクルートの調査では、中途社員の17.1%が「教育・研修環境が整っておらず困った」と回答しています。これは6人に1人が”放置状態”であることを示しており、企業にとって深刻な課題です。

3. 「教える」はスキルである

教えることは「誰でもできる当たり前のこと」ではありません。むしろ、仕事ができる人ほど教えるのが苦手ということもあります。なぜなら、彼らはすでに無意識レベルで仕事をこなしており、どこでつまずくかがわからないからです。

教えるには、相手の立場に立って物事を言語化する力が必要です。「なぜこれをやるのか」「どうやるのか」「どの程度で合格とするのか」といったことを丁寧に伝える必要があります。これは”感覚”ではなく、磨くべきビジネススキルです。

4. 教える文化が職場の心理的安全性をつくる

新人や中途社員が「わからない」と言える雰囲気がなければ、学ぶことはできません。教える文化とは、質問を歓迎し、未熟な状態を否定しない空気のことです。これは心理的安全性の土台であり、チームの生産性とも直結しています。

Googleが行った研究でも、チームの成果を決める最大要因は「心理的安全性」であることが分かっています。つまり、教える文化のある職場は、結果としてパフォーマンスも高くなるのです。

5. 教える力をどう育てるか

まずは、管理職やリーダーに「教えることは義務である」という認識を持たせることが第一歩です。その上で、以下の3つのスキルを育てる研修や実践の場を設けましょう:

言語化力:業務や判断基準をわかりやすく言葉にする力
傾聴力:相手の理解度や困りごとを把握する力
フィードバック力:成果や課題を適切に伝える力

これらは一朝一夕で身につくものではありませんが、実践を通じて磨かれていきます。社内でロールプレイングやペアワークの時間を設けることも効果的です。

まとめ

「ちゃんと教えてくれないから辞めた」——これは今や少数派の声ではなく、若手や中途社員のあいだでごく一般的な離職理由となっています。リーダーには教える力が、組織には教える文化が求められている時代です。

採用にかけるコストや工数を考えれば、採った人材が辞めてしまう損失は計り知れません。これからの時代、「教えられる組織」こそが、人材の定着と成長を実現し、企業競争力を高めていくのです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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