部下メンバーのマネジメントがうまくいかない本当の理由

サービス資料をダウンロードする> 研修導入に興味のある方はこちら>

シェアする

「部下のやる気が見えない」「指示を出しても思うように動いてくれない」「チームの生産性が上がらない」

このような部下のマネジメントに関する悩みを抱える管理職の方は非常に多いのが現状です。

多くの管理職が部下のマネジメント力を向上させようと、コーチング研修を受けたり、1on1の頻度を増やしたり、部下との飲み会を企画したりと、さまざまな努力をされています。しかし、これらの取り組みをしても、なかなか思うような成果が得られないという声をよく聞きます。

実は、これらの対策の多くは、根本的な問題を見落としているため、期待する効果を得ることができません。ぼくがこれまで2000社をサポートし、累計3万人を指導してきた経験から、部下のマネジメントがうまくいかない本当の原因と、その解決策についてお話しします。

多くの管理職が陥る「感覚的マネジメント」の罠

ぼくが企業研修でよく目にするのが、「感覚的マネジメント」に頼ってしまっている管理職の姿です。これは、部下とのコミュニケーションや指示出し、評価などを、具体的な基準や方法論ではなく、自分の感覚や経験だけに頼って行ってしまうマネジメントスタイルのことです。

具体的には、このような行動をしてしまっています。

「なんとなく」の指示出し
「もっと頑張って」「お客様目線で考えて」「チームワークを大切に」といった抽象的な指示を出してしまう。部下からすると、何をどう頑張ればいいのか、どのような行動を取ればいいのかが全く見えません。

曖昧な期待値の伝達
「君にはもっとできると思っているから」「期待しているよ」と言いながら、具体的に何を期待しているのか、どのレベルまで達成すれば良いのかを明確に伝えていない。

印象ベースの評価
「あの人は頑張っている」「やる気が感じられない」といった印象で部下を評価してしまう。客観的な基準がないため、部下も納得できず、改善点も見えてこない。

感情論での叱責や称賛
「なぜできないんだ」「素晴らしい」といった感情的な反応はするものの、なぜダメなのか、何が素晴らしいのかを具体的に伝えられない。

なぜこのような感覚的マネジメントが問題なのでしょうか。最大の問題は、「相手に伝わらない」ことです。管理職は伝えているつもりでも、部下には何も伝わっていません。その結果、部下は何をすればいいかわからず、モチベーションも下がり、成果も上がらない、という悪循環に陥ってしまうのです。

また、感覚的マネジメントでは、管理職自身も自分の指導方法を改善することができません。なぜなら、「なんとなく」行っていることは、「なんとなく」しか振り返ることができないからです。「今日の1on1はうまくいったかな?」と思っても、何がうまくいったのか、次回はどう改善すればいいのかがわからないのです。

ぼくが研修で関わったある製造業では、課長職の方が「部下が指示通りに動いてくれない」と悩んでいました。詳しくヒアリングしてみると、その課長は「品質を意識して作業してほしい」と部下に伝えていたそうです。しかし、「品質を意識する」とは具体的にどのような行動を取ることなのか、どのような基準で品質を判断すればいいのかは、一切説明していませんでした。
部下の立場からすると、「品質を意識して」と言われても、何をどうすればいいのかわかりません。結果として、部下は自分なりの解釈で作業を行い、課長の期待とは異なる結果になってしまう。そして課長は「指示通りに動いてくれない」と感じてしまう、という構造になっていたのです。

このような感覚的マネジメントから脱却するために必要なのが、「言語化」という考え方です。自分の期待や指示、評価基準を明確な言葉にして伝える。これにより、部下は何をすればいいかが明確になり、管理職も自分のマネジメントを客観的に見直すことができるようになります。

部下の行動を変える「明確な指示」の作り方

部下のマネジメントで最も重要なのは、「明確な指示」を出すことです。多くの管理職が「指示を出しているのに部下が動いてくれない」と悩んでいますが、実際にはその「指示」が明確ではないケースがほとんどです。

なぜ明確な指示が必要なのか

人は曖昧な指示に対して、必ず自分なりの解釈をします。そして、その解釈は十中八九、指示を出した側の意図とは異なるものになります。これは部下の能力や意欲の問題ではなく、人間の脳の構造的な特徴です。

ぼくが関わったある IT企業での例をお話しします。プロジェクトマネージャーが開発チームに「ユーザビリティを重視して画面を作ってください」と指示を出しました。しかし、できあがった画面を見て「これは求めていたものと違う」となってしまいました。

詳しく確認してみると、プロジェクトマネージャーが言った「ユーザビリティを重視」とは「操作手順を3ステップ以内に収める」という意味でした。一方、開発チームは「見た目をわかりやすくする」と解釈していたのです。どちらも間違いではありませんが、求められる成果物は全く異なります。

明確な指示の3つの要素

では、どのような指示が「明確な指示」と言えるのでしょうか。ぼくは3つの要素が必要だと考えています。

1. 具体的な行動レベルまで落とし込まれている 「頑張って」ではなく「1日10件の新規営業電話をかける」 「お客様目線で」ではなく「お客様からの問い合わせには2時間以内に返答する」 というように、具体的にどのような行動を取ればいいかが明確になっている指示です。

2. 判断基準が数値化されている 「たくさん」ではなく「月間50件以上」 「早めに」ではなく「3営業日以内に」 といったように、達成度合いを客観的に判断できる基準が示されている指示です。

3. 期限と優先順位が設定されている 「いつか」ではなく「来週の金曜日まで」 「できれば」ではなく「最優先で取り組む案件として」 というように、いつまでにやるべきか、他の業務との優先順位はどうなのかが明確になっている指示です。

実際の指示の変化例

ある金融機関で、支店長が営業担当者に出していた指示の変化をご紹介します。

【改善前】 「お客様との関係構築をもっと意識して、質の高い提案をしてほしい。数字も大事だけど、お客様に喜んでもらえるような営業を心がけてください」

【改善後】 「新規顧客との初回面談では必ず30分以上時間をかけて、お客様の事業課題を3つ以上ヒアリングしてください。そのうえで、1週間以内に課題解決につながる具体的な提案書を作成し、2回目の面談を設定してください。月末までに新規顧客5社との2回目面談を完了させることを目標とします」

このように指示を明確化した結果、営業担当者の行動が大きく変わりました。何をすればいいかが明確になったため、迷いがなくなり、結果として営業成績も向上しました。

部下のモチベーションを高める「成長の見える化」

部下のマネジメントにおいて、指示を明確にすることと同じくらい重要なのが、「成長の見える化」です。多くの部下が仕事に対するモチベーションを失う理由の一つが、自分の成長が実感できないことです。

なぜ成長の見える化が必要なのか

人は自分の成長を実感できたときに、最も高いモチベーションを発揮します。逆に、毎日同じような業務を繰り返していて、自分がどれだけ成長しているかがわからない状態では、仕事に対する意欲は徐々に低下していきます。

ぼくが研修で関わったある商社では、若手社員が「自分が成長しているかわからない」「この仕事を続けていて意味があるのか不安」という悩みを抱えていました。しかし、詳しく話を聞いてみると、実際には大きく成長していることがわかりました。問題は、その成長が「見える化」されていなかったことでした。

成長の見える化の具体的方法

成長を見える化するためには、以下のような取り組みが効果的です。

スキルの言語化と段階設定 「営業力がある」ではなく、「初回面談で顧客の課題を3つ以上聞き出せる」「提案書を1日で作成できる」「クロージングで8割以上の確率で次のステップに進める」といったように、具体的なスキルを言語化し、段階を設定します。

定期的な振り返りの実施 月に1回、「3ヶ月前の自分と比べてできるようになったこと」を具体的に言語化してもらいます。「なんとなく慣れた」ではなく、「以前は資料作成に3時間かかっていたが、今は1時間でできるようになった」といった具体的な変化を確認します。

成果の数値化と記録 「頑張った」ではなく、「新規顧客へのアプローチ数が月20件から35件に増加」「提案の成約率が30%から45%に向上」といったように、成果を数値で記録し、成長の軌跡を追えるようにします。

ある製薬会社では、この成長の見える化を導入した結果、若手社員の離職率が大幅に改善されました。同じ業務を行っていても、自分の成長が明確に見えることで、仕事に対する意味や価値を感じられるようになったのです。

管理職による成長のフィードバック

そして重要なのが、管理職が部下の成長を具体的に言語化してフィードバックすることです。「君は成長している」ではなく、「3ヶ月前と比べて、顧客との関係構築スピードが格段に上がっている。具体的には、初回面談での情報収集量が2倍になり、2回目のアポイント獲得率も70%から90%に向上している」といったように、具体的な成長ポイントを伝えます。

このような成長の見える化により、部下は自分の現在地と目指すべき方向が明確になり、モチベーション高く業務に取り組むことができるようになります。

まとめ

部下のマネジメントがうまくいかない根本的な原因は、多くの場合「感覚的マネジメント」にあります。コーチング研修や1on1の頻度を増やすといった表面的な対策ではなく、まずは自分の指示や期待、評価基準を明確に言語化することが重要です。

ぼくがこれまで2000社をサポートしてきた経験から、言語化によるマネジメント改善は、短期間で大きな効果を生み出します。明確な指示により部下の行動が変わり、成長の見える化によりモチベーションが向上し、結果として組織全体のパフォーマンスが向上します。

まずは今日から、部下への指示を一つ、具体的に言語化してみてください。「もっと頑張って」ではなく、「今週中に新規顧客10社にアプローチしてください」といったように。その小さな変化が、あなたのマネジメント力を大きく向上させる第一歩となるはずです。

FAQ

Q. 言語化による指示は、部下の創造性を奪ってしまうのではないでしょうか?

A. これは多くの管理職が心配される点ですが、実際は逆です。明確な指示により「何をすべきか」が明確になることで、部下は「どのようにするか」に創造性を発揮できるようになります。ぼくが関わった企業でも、言語化により指示を明確化した後の方が、部下からより創造的なアイデアが出てくるようになったという事例が多数あります。

Q. 部下によって指示の出し方を変える必要はありますか?

A. 指示の明確さは全員に対して同じレベルで必要ですが、伝え方は部下の特性に合わせて調整することが大切です。データを重視する部下には数値を多めに、ビジュアル思考の部下には図解を併用するなど、伝達方法は個別にカスタマイズしながら、内容の明確さは維持してください。

Q. 言語化に時間がかかりすぎて、業務効率が下がりませんか?

A. 最初は言語化に時間がかかるかもしれませんが、慣れてくると逆に効率が向上します。明確な指示により部下の迷いがなくなり、手戻りや確認作業が大幅に減少するからです。ぼくが関わった企業では、言語化の導入により、平均して20-30%の業務効率向上が実現されています。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

お問い合わせ

さまざまなビジネスシーンでお悩みのことはありませんか?
個人向けに3万人以上、法人向けに200社以上指導した
言語化メソッドと経験を用いて、御社のお悩みを解決します。
まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

お電話でのお問い合わせはこちら

03-3542-3139

【受付時間】平日 9:00~18:00