新任女性リーダーが部下指導で失敗しがちなポイント

サービス資料をダウンロードする> 研修導入に興味のある方はこちら>

シェアする

「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」

「指導しても思うように成長してくれない」
「リーダーとしての自信が持てない」

新任の女性リーダーの多くが、このような部下指導の悩みを抱えています。

そんなとき、多くの方が「コーチング研修を受けよう」「コーチングスキルを身につけよう」と考えるのですが、実はここに大きな落とし穴があります。表面的なコーチング手法を学んでも、部下との関係は改善しません。むしろ、「なぜか部下との距離が縮まらない」「頑張って質問しているのに、部下が心を開いてくれない」といった新たな悩みを生むことになりかねません。

多くの新任リーダーが陥る「コーチング技法の罠」

新任の女性リーダーの多くが、部下指導のためにコーチング研修を受けたり、コーチング関連の書籍を読んだりします。そして学んだ通りに「傾聴」「質問」「承認」といった技法を実践しようとします。

しかし、実際の職場で起こっているのは以下のような状況です。

「傾聴しているつもりが、相手に伝わらない」
部下の話を最後まで聞こうと努力しているのに、相手からは「本当に聞いてくれているのかな?」「上司は自分のことを理解してくれていない」と思われてしまいます。

「質問をしても、表面的な答えしか返ってこない」
「どう思う?」「何か困っていることはない?」と質問を重ねても、部下からは「特にありません」「大丈夫です」といった当たり障りのない回答ばかりで、本音を引き出すことができません。

「承認しているつもりが、空虚に感じられる」
「頑張っているね」「よくやっているよ」と声をかけても、部下の表情は晴れません。むしろ、「本当にそう思っているのかな?」という疑念を抱かれてしまいます。

なぜこのような状況が生まれるのでしょうか。それは、コーチング技法を学んでも、「自分の考えや感情を正確に言語化する力」が不足しているからです。

具体例:「傾聴」における言語化不足
部下が「最近、仕事がうまくいかなくて…」と相談してきたとき、多くのリーダーは「そうなんだ、大変だね」と返します。これは傾聴の基本に沿った反応ですが、部下にとっては「この人は本当にぼくの状況を理解してくれているのだろうか?」という疑問を生みます。

なぜなら、「大変だね」という言葉は、部下の具体的な状況や感情を正確に言語化していないからです。部下が感じている「うまくいかない」の中身は、「スケジュール管理がうまくいかない」のか、「クライアントとのコミュニケーションで困っている」のか、「新しい業務に不安を感じている」のか、それぞれ全く異なります。

言語化スキルで問いかけをより解像度高く、明確にできれば、「今のお話を聞いていて、特に○○の部分で悩まれているように感じたのですが、私の理解は合っていますか?」と、部下の状況を具体的に言語化して会話することができます。こうなると部下は「この人は本当に自分の話を聞いて、理解しようとしてくれている」と感じ、より深い信頼関係が築かれるのです。

コーチング技法は「やり方」に過ぎません。問いかければいいわけではありませんし、ましてやオウム返しで相手が言ったことを繰り返せばいいわけでもありません。ポイントは「何を聞くべきか?」「何に焦点を当てればいいか?」を具体的にし、リーダーが部下の頭の中を明確にしてあげられるかどうかです。

表面的な技法だけを学んでも、部下との本当の信頼関係は築けません。むしろ、「技法に頼っている」「マニュアル通りにやっている」という印象を与えてしまい、逆効果になることさえあります。

言語化スキルが部下指導を根本から変える理由

部下指導において言語化スキルが重要な理由は、コミュニケーションの本質にあります。人と人との関係性は、お互いの考えや感情を正確に理解し合うことで深まります。しかし、多くの場合、私たちは自分の考えや感情を曖昧にしか表現できていません。

部下が本当に求めているのは「理解されること」

部下が上司に対して最も求めているのは、「自分のことを理解してもらうこと」です。しかし、従来のコーチング手法では、この「理解」の部分が曖昧になりがちです。

言語化スキルがない場合の指導例
部下:「この案件、思うように進まなくて困っています」
上司:「そうなんだ。どうしたらいいと思う?」

言語化スキルがある場合の指導例
部下:「この案件、思うように進まなくて困っています」
上司:「今のお話を聞いていて、『思うように進まない』というのは、具体的には計画していたスケジュールより遅れているということでしょうか?それとも、クライアントからの反応が想定と違うということでしょうか?」

前者の場合、部下は「この人は本当に私の状況を理解してくれているのだろうか?」と感じます。一方、後者の場合、部下は「この人は私の話をしっかり聞いて、具体的に理解しようとしてくれている」と感じ、より詳細な情報を話してくれるようになります。

指導内容が具体的になり、実行しやすくなる

言語化スキルを持つリーダーは、部下の課題を具体的に特定し、解決策も具体的に提示できます。

曖昧な指導
「もっと積極的にコミュニケーションを取ろう」

具体的な指導
「クライアントとの打ち合わせで、相手の課題を具体的に把握するために、『現在一番困っていることは何ですか?』『それによってどんな影響が出ていますか?』という2つの質問を必ず含めてみてください」

後者の方が、部下にとって実行しやすく、成果も出やすいことは明らかです。

部下の自己理解が深まり、自主性が育つ

言語化スキルを持つリーダーは、部下の考えや感情を整理して返すことで、部下自身の自己理解を促進します。

部下の発言
「なんだかモヤモヤして、やる気が出ません」

言語化スキルを活用した返し
「お話を聞いていて、『やる気が出ない』という中に、『この業務の意味がよく分からない』という部分と、『自分のスキルで本当にできるのか不安』という部分の、2つの要素があるように感じたのですが、どうでしょうか?」

このように部下の曖昧な感情を具体的に言語化してあげることで、部下は自分の状況を客観視できるようになり、「では、業務の意味を上司に確認してみます」「スキルアップのための勉強計画を立ててみます」といった具体的な行動を自発的に起こすようになります。

「状況の言語化」で問題を整理する

部下が抱えている問題や課題を、具体的に整理して言語化する練習をしましょう。

5W1Hで整理する
Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)の観点で、部下の話を整理して返してあげます。

問題の構造を可視化する
「今のお話をまとめると、A社との契約で、納期の部分と予算の部分、この2つの課題があるということですね」といったように、複雑な問題を要素分解して整理します。

優先順位を明確にする
「その中でも、特に緊急性が高いのは納期の問題で、これを来週までに解決する必要があるということですね」と、優先順位も含めて言語化します。

「解決策の言語化」で行動を促す

問題を整理したら、次は解決策を具体的に言語化します。

選択肢を提示する
「この状況だと、A案とB案の2つの方法が考えられます。A案は…、B案は…。どちらがやりやすそうですか?」と、複数の選択肢を具体的に提示します。

実行ステップを明確にする
「では、まず明日の午前中にクライアントに連絡を取り、来週の金曜日までに修正版を提出するという方向で進めましょう。その際の連絡内容は…」と、実行ステップを具体的に言語化します。

成功の基準を設定する
「今回の案件が成功したと言えるのは、クライアントから『満足』の評価をもらい、次回の案件につなげることですね」と、成功の基準も明確に言語化します。

言語化スキルを活用した実際の指導事例

ぼくがサポートした企業での実際の事例をご紹介します。

事例1:新人営業担当者の指導

状況 入社3ヶ月の新人営業担当者が、「お客さんとの商談がうまくいかない」と相談してきました。

従来の指導方法
「もっと積極的に提案してみよう」「お客さんの立場に立って考えてみて」

言語化スキルを活用した指導
まず、「商談がうまくいかない」という状況を具体的に言語化しました。 「『うまくいかない』というのは、具体的にはどの段階でうまくいかないのでしょうか?最初のヒアリングでお客さんの課題を把握できないのか、課題は分かったけれど提案内容が響かないのか、それとも提案は理解してもらえたけれど契約に至らないのか、どの部分でしょうか?」

部下の回答から、「ヒアリングの段階でお客さんの本当の課題を引き出せていない」ことが問題だと分かりました。

そこで、具体的な解決策を言語化して提示しました。 「では、次回の商談では、『現在一番困っていることは何ですか?』『それによって、日常業務にどんな影響が出ていますか?』『その問題が解決されたら、どんな状態になりたいですか?』この3つの質問を必ず含めてみてください。そして、お客さんの回答を『つまり、○○ということですね』と自分の言葉で言い換えて確認してください」

結果 1ヶ月後、この新人営業担当者の契約率は30%向上しました。本人からは「お客さんとの距離が一気に縮まった感じがします。以前は表面的な会話しかできていませんでしたが、今は本当の課題について深く話し合えるようになりました」という感想をもらいました。

事例2:ベテラン社員のモチベーション向上

状況 勤続10年のベテラン社員が、最近仕事に対する意欲が低下しているように見えました。

従来の指導方法
「経験豊富だから、もっと積極的に後輩指導もお願いします」「新しいプロジェクトを任せてみましょう」

言語化スキルを活用した指導
まず、この社員の現在の心境を具体的に言語化して確認しました。 「最近、お疲れのように見えるのですが、お話を聞いていて、『これまでと同じような業務の繰り返しで、成長感を感じられない』という部分と、『自分のキャリアの方向性が見えない』という部分、両方あるように感じました。ぼくの理解は合っていますか?」

社員からは「まさにその通りです。このままでいいのか不安になっています」という本音を聞くことができました。

そこで、具体的なキャリア設計を一緒に言語化しました。 「これまでの10年間で培ったスキルを整理すると、A、B、Cの3つの強みがありますね。これを活かして、今後3年間で『社内の○○分野のエキスパートになる』『新人指導のプロフェッショナルになる』『○○資格を取得して専門性を高める』といった方向性が考えられます。どの方向が一番やりがいを感じられそうですか?」

結果 この社員は「新人指導のプロフェッショナル」という方向性を選択し、指導方法を体系化するプロジェクトを立ち上げました。半年後には、新人の早期戦力化率が40%向上し、社員本人も「久しぶりに仕事が楽しいと感じています」と語っています。

FAQ

Q: 部下から「質問が多すぎる」と言われた場合、どうすればよいですか?
A: それは質問の仕方に問題がある可能性があります。相手の話を遮って質問するのではなく、まず最後まで聞いてから、「今のお話をまとめると…」という形で言語化して確認することから始めてください。また、「ぼくの理解が正しいか確認したいのですが」と前置きすることで、相手も質問の意図を理解しやすくなります。

Q: 自分の言語化が間違っていた場合、どう対処すればよいですか?
A: 間違いを恐れる必要はありません。「ぼくの理解が間違っていました。もう一度教えてもらえますか?」と素直に訂正すれば大丈夫です。むしろ、相手の話を真剣に理解しようとする姿勢が伝わり、信頼関係が深まることが多いです。完璧な理解よりも、理解しようとする姿勢の方が重要なのです。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

お問い合わせ

さまざまなビジネスシーンでお悩みのことはありませんか?
個人向けに3万人以上、法人向けに200社以上指導した
言語化メソッドと経験を用いて、御社のお悩みを解決します。
まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

お電話でのお問い合わせはこちら

03-3542-3139

【受付時間】平日 9:00~18:00