「もっとスピード感を持って」。81人に聞いたら、受け取り方は5通りに割れた

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上司が目標設定でよく使う言葉があります。「スピード感を持ってほしい」「周りを巻き込んでほしい」。

言った側は伝えたつもりでいます。では、聞いた側は何をすると受け取ったのでしょうか。

Web上で5つの言葉について「あなたは何を求められたと受け取りますか」と尋ねたところ、81人から回答が集まりました。結果は、どの言葉でも意見が割れました。

「スピード感を持って」で、最も多かった受け取り方は37%

最初の言葉は「もっとスピード感を持ってほしい」です。

受け取り方割合
作業に時間をかけすぎず、早く仕上げてほしい37%
後回しにせず、すぐ取りかかってほしい28%
迷う時間を減らして、早く判断してほしい14%
どれとも違う14%
完成する前に、途中段階で一度見せてほしい7%

最も多い受け取り方でも37%です。残りの6割は別のことを思い浮かべています。

ここで起きることを想像してみてください。上司は「途中で一度見せてほしい」と思って言いました。しかし部下は「早く仕上げてほしい」と受け取り、完成させてから持ってきます。部下は急いで仕上げた。上司は途中で見たかった。どちらも手を抜いていないのに、期待は外れます。

5つの言葉すべてで、意見は割れた

ほかの4つの言葉も同じでした。最も多い受け取り方の割合を並べます。

上司の言葉最も多かった受け取り方割合
もっとスピード感を持ってほしい早く仕上げてほしい37%
もっと周りを巻き込んでほしい進め方や状況を、関係者に共有してほしい24%
後輩の育成に力を入れてほしい自分でやらず、後輩に任せてほしい41%
業務を効率化してほしい必要のない作業をやめてほしい31%
もっとお客様の立場で考えてほしい希望の奥にある困りごとを探ってほしい31%

5つのうち4つで、最多の受け取り方が4割に届きませんでした。「全員が同じ意味に受け取った言葉」は一つもありません。

特に割れたのが「周りを巻き込んでほしい」です。「手伝ってもらう」「意見を聞く」「賛同を得る」「状況を共有する」の4つが、どれも2割前後で並びました。同じ一言から、人を動かす話とも、情報を流す話とも受け取られています。

「後輩の育成」で、教えると答えた人は10%

意外だったのは「後輩の育成に力を入れてほしい」です。

受け取り方割合
自分でやってしまわず、後輩に任せてほしい41%
後輩が困っていないか、こまめに声をかけてほしい19%
後輩の仕事を見て、改善点を伝えてほしい17%
どれとも違う14%
仕事のやり方を、もっと丁寧に教えてほしい10%

「丁寧に教える」は10%しかいません。育成という言葉から多くの人が思い浮かべたのは、教えることではなく、手を離して任せることでした。

もし上司が「もっと丁寧に教えてほしい」という意味で言ったなら、この言葉はほとんど伝わりません。逆に、部下が教える時間を増やして報告したとき、「そうじゃなくて、任せてほしかった」と言われる。努力の方向が最初からずれています。

1割の人は「選択肢のどれとも違う」と答えた

もう一つ注目したいのが、「どれとも違う」を選んだ人が全体で1割以上いたことです。理由を書いてくれた人の内容を整理すると、大きく3つに分かれました(原文は公開しない約束のため、傾向として要約します)。

  1. 「本人に聞かないと分からない」 — 選択肢を選ぶより先に、言った人に確認するという回答。このゲームが伝えたかったことを、先回りして答えている人たちです。
  2. 「全部まとめてという意味だ」 — すぐ取りかかり、途中で見せ、期日までに仕上げる。一連の流れ全体を指していると受け取る人。
  3. 「叱られていると感じた」 — 行動の要望ではなく、評価や注意として受け取る人。「怠けていると責められている」という趣旨の回答もありました。

3つ目は見過ごせません。同じ言葉が、行動の指示ではなく人格への評価として届くことがあります。その場合、部下は何をすればいいかではなく、どう思われているかを考え始めます。

「言ったのに伝わらない」の正体

回答後に「別の受け取り方を見てどう感じたか」を尋ねたところ、40人が答えてくれました。

  • 想像していたが、あらためて気づいた:15人
  • 想像していなかった解釈があった:13人
  • 想定の範囲だった:7人
  • 場面や選択肢が分かりにくかった:5人

半数以上が、自分の想像と違う受け取り方があったと答えています。

ここから言えるのは、伝わらない原因は話し方の上手下手ではない、ということです。「スピード感」も「育成」も「効率化」も、言葉としては誰もが知っています。問題は、その言葉が何種類もの行動に翻訳できてしまうことです。

言語化とは、流暢に話すことではありません。自分が何を期待しているのかを、相手が行動に移せる粒度まで具体化し、それが同じ意味で届いたかを確かめることです。

明日から使える、確認の一言

長い研修をしなくても、その場でできることがあります。言葉を言い換えるのではなく、一つ質問を足すだけです。

言った言葉足す一言
スピード感を持って特に、どの場面を早くしてほしいですか?
周りを巻き込んで誰に、どこまで関わってもらうイメージですか?
後輩の育成を教える時間を増やすのと、任せる範囲を広げるのと、どちらですか?
業務を効率化して特に、どの作業の時間を減らしたいですか?
お客様の立場でお客様の希望と違う提案をしてもよい場面はありますか?

上司の側から足してもいいですし、言われた部下の側から聞いてもかまいません。この一往復があるかないかで、1か月後の成果物が変わります。

あなたの受け取り方は、周りとどれくらい違うか

今回の5問は、Web上で誰でも試せます。5つの言葉に答えると、自分の受け取り方と、ほかの参加者の答えを見比べられます。所要時間は2〜3分、登録は不要です。

▶ [問題です] あなたは何を求められているでしょうか?

https://mokuhyo-kotoba.pages.dev/

チームで試して、結果を見ながら「うちの場合はどれを期待しているか」を話すと、そのまま目標設定のすり合わせになります。


調査について

  • 期間:2026年9月21日〜10月1日
  • 方法:Web上の体験ゲーム「[問題です] あなたは何を求められているでしょうか?」(https://mokuhyo-kotoba.pages.dev/ )での回答
  • 有効回答:81人(「周りを巻き込む」の設問のみ、選択肢を途中で見直したため74人)
  • 回答者の年代:50代30人、40代28人、60代14人、30代6人、70代以上2人、20代1人

インターネット上で自発的に参加した方の回答であり、特定の企業や職種を代表するものではありません。年代にも偏りがあります。数字は傾向を示すものとしてお読みください。自由記述の原文は公開していません。

この記事を書いた人

木暮太一 写真

木暮太一

(一社)言語化コミュニケーション 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。

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