
多くの日本企業で、組織の方針や目標が言語化されていない状態が続いています。社長の思いは熱いのに、なぜかメンバーに伝わらない。部署ごとの連携がうまくいかず、同じような仕事を重複して行っている。こういった問題の多くは、組織として言語化できていないことが原因です。今回は、言語化されていない組織によく見られる5つの特徴を解説します。
特徴1:「いい感じで」「よろしく」が飛び交う会議
「この企画は、いい感じにまとめておいてください」 「広報の方は、よろしくお願いします」
このような曖昧な指示が飛び交う会議を経験したことがある方は多いでしょう。一見、和やかな雰囲気に見えますが、実は最も深刻な問題をはらんでいます。あるIT企業の例を見てみましょう。
「新規プロジェクトの kickoff 会議で、部長から『いい感じの提案をまとめておいて』と指示を受けました。1週間かけて資料を作りましたが、『こういう提案じゃない』と全面修正になりました。『いい感じ』の認識が全く違っていたんです」(30代・マネージャー)
ここで問題なのは、指示を出す側も受ける側も、その場では「わかったつもり」になってしまうことです。しかし実際には、お互いの認識が大きくずれていることがほとんどです。
特徴2:ゴールが数値化されていない
「顧客満足度を上げる」「業務効率を改善する」「売上を伸ばす」。これらの目標自体は間違っていません。しかし、具体的な数値目標が設定されていないケースが非常に多いのです。
ある製造業では、「品質向上」を掲げながら、具体的な指標を設定していませんでした。その結果、現場では「不良品をゼロにする」という解釈と、「顧客クレームを減らす」という解釈が混在し、施策の方向性が定まらない状態が続いていました。
「数値目標を出すと責任を問われる」という心理が働き、あえて曖昧にしているケースも少なくありません。しかし、これでは組織として評価のしようがありません。
特徴3:「暗黙の了解」が多すぎる
「うちの会社ではこれが当たり前」「これくらい察してほしい」という声をよく耳にします。特に経験の長い社員ほど、この傾向が強くなります。
ある金融機関では、新入社員の離職率が高いことが問題になっていました。調査してみると、「当然知っているはず」という暗黙の了解が多すぎて、新人が仕事の進め方を理解できていないことが判明しました。
「先輩社員は『こんなの常識でしょ』と言いますが、私たちにとっては全然常識ではありません。聞きたくても、空気を読めと言われるので聞けない状況です」(入社2年目・社員)
特徴4:同じ仕事の重複が多い
部署間のコミュニケーション不足により、似たような業務を複数の部署で行っているケースが散見されます。ある大手メーカーでは、マーケティング部門と商品企画部門が、それぞれ別々に市場調査を行っていました。
「後から気づいたんですが、うちの部署で100万円かけて取得したデータと、ほぼ同じものを別部署でも購入していました。お互いの動きを共有する仕組みができていなかったんです」(40代・部長)
特徴5:改善提案が形骸化している
「改善提案制度はあるのに、誰も真剣に取り組まない」という状況も、言語化されていない組織の特徴です。提案の評価基準が明確でなく、どんな提案が求められているのかがわからないためです。
「毎月ノルマとして改善提案を出していますが、正直に言うと形だけです。どんな提案を出しても『ありがとう』で終わり、実現に向けた検討もされません」(20代・社員)
どうすれば改善できるのか
言語化されていない組織を改善するためには、以下の3つのステップが効果的です。
- ・まず、現状で言語化されていない部分を洗い出す
- ・優先順位の高いものから、具体的な数値や基準を設定する
- ・定期的に見直しと修正を行う
特に重要なのは、トップダウンで進めるのではなく、現場の声を積極的に取り入れることです。実際に業務を行っているメンバーだからこそ、何が言語化されていないかを実感しているはずです。
ある企業では、各部署から1名ずつ「言語化推進委員」を選出し、月1回の会議で課題の洗い出しと解決策の検討を行っています。半年間の活動で、以下のような成果が出ています。
- ・会議の所要時間が平均30%削減
- ・部署間の重複業務が40%減少
- ・新入社員の1年目離職率が15%から5%に改善
言語化は、一朝一夕にはできません。しかし、継続的な取り組みによって、必ず組織は変わっていきます。まずは自分の周りから、「当たり前」を見直してみませんか?
この記事を書いた人
木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。
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