
キャリア研修は、従業員の成長意欲を高め、組織の人材定着率向上に大きく寄与しています。多くの企業が自己分析から始まり、目標設定、キャリアプランニングまでの一連の流れを丁寧に設計し、参加者から高い満足度を得ています。しかし、よかれと思って実施している内容の中には、かえって参加者を混乱させたり、表面的な理解に留まらせてしまうものもあります。さらに効果を高めるためには、単なる気づきやプランニングを超えて、参加者が自分の考えや価値観を明確に「言語化」できる力を育てることが重要です。今回は、キャリア研修の現状と、より深い効果を生み出すための新しいアプローチについて考えてみたいと思います。
キャリア研修でモチベーションは高まる
ここ数年、キャリア研修の重要性は多くの企業で認識されており、その効果は確実に現れています。自己分析を通じて参加者が自分の強みや価値観を発見し、明確なキャリアビジョンを描けるようになることで、モチベーションの向上や離職率の低下につながっています。
特に優れているのは、研修を通じて従業員が自分のキャリアを受け身ではなく主体的に考えるようになることです。上司との面談においても、以前は「何となく頑張ります」といった曖昧な表現だったものが、具体的な目標や取り組み方針を語れるようになります。これは組織にとって非常に価値のある変化と言えるでしょう。
また、キャリア研修は人事制度との連携も図りやすく、昇進・昇格の基準を明確にしたり、適材適所の配置を実現したりする土台としても機能しています。
「よかれと思って」が生む逆効果
しかし、よかれと思って積極的に実施している内容の中には、参加者にとって逆効果になりかねないものもあります。
一つは、過度に詳細なキャリアプランの作成を求めることです。5年後、10年後の具体的なポジションや年収まで数値化させる研修がありますが、これは参加者にプレッシャーを与え、柔軟性を失わせる可能性があります。特に若手社員にとっては、まだ見えていない可能性を狭めてしまうリスクがあります。
もう一つは、成功事例の紹介に偏りすぎることです。「こんなキャリアを歩んだ先輩がいます」という事例は確かに参考になりますが、それが「正解」だと受け取られてしまうと、参加者は自分なりの道筋を考えることをやめてしまいます。
さらに、自己分析ツールの結果を絶対視してしまうことも問題です。診断結果が「営業向き」と出れば営業を目指すべきだと思い込んでしまい、本来の適性や興味を見失うケースも見受けられます。
さらに効果を高めるための視点
現在のキャリア研修をより効果的にするためには、まず「キャリア」という言葉を明確にすることが不可欠です。キャリアを考えるとは、今後どのように出世していくかを考えるということなのか、転職プランを考える事なのか、それとも給料のことなのか、「自分はいったい何を考えればいいのか」が不明確なままでは思考は進みません。
多くの場合は、「この会社でどんどんレベルが高い仕事をしてほしい。あなたは今後何をしますか? 何をしたいですか? それを考えましょう」というようなことを問われていると思います。
ただし、この問いかけも漠然としていることが多く、研修参加者は周囲からも賛同を得やすい建前のキャリアプランを作るだけで終わっています。これではもったいないですね。
言語化すれば、より明確に見えるようになる
これらの課題を解決し、さらに効果を高めるためには、「言語化(明確化)」の要素を入れながら研修を組み立てることが有効です。
「言語化」のプログラムでは、参加者が自分の考えや感情、価値観を明確な言葉で表現する力を養います。単に「やりがいを感じる」ではなく、「なぜそれにやりがいを感じるのか」「どのような瞬間に最も充実感を得るのか」を具体的に言語化できるようになることで、自己理解が格段に深まります。
キャリアを考えるうえで言語化すべき要素
具体的には、以下の要素を明確に言語化することが重要です。
自分の願望の言語化:「人の役に立ちたい」という曖昧な表現ではなく、「どのような人に、どのような形で、なぜ役に立ちたいのか」を具体的に表現する。例えば「新しいことにチャレンジする中小企業の経営者に対して、財務面でのリスクを軽減する支援を通じて、彼らの挑戦を後押ししたい」といった具合です。「価値観」という一般的な言葉ではなく、「自分の願望」に焦点を当てることで、より明確に意識することができるようになります。
不安と恐怖の言語化:自分の願望と同時に、自分が抱いている不安と恐怖を言葉にします。人がステップアップを望む背景には「願望と不安・恐怖」の両方があります。
もちろん、願望は大事ですが、願望だけでは行動できないことがあります。「いつかそうなれたらいいなぁ」と思いつつ、足元の忙しさに負けて行動しなくなるのです。
行動するためには「現状から脱却しなければいけない」と感じることが必要です。そしてそのために明確に意識したいのが「今抱えている不安や恐怖」です。そこに焦点を当てることで、すぐに行動しなければいけないという感覚になります。
この2つを先に言語化すれば、キャリアを考える真剣度が変わります。そして「キャリアプランを作っても忙しくて動けない」を減らすことができます。
自分起点のキャリア研修が必要
もしこれまで「成功モデルケース」をイメージさせることでキャリアを描いてもらおうとしていたなら、やり方を変えてもいいかもしれません。「こんな成功事例があります」「一般的なこんなキャリアパスをたどります」と言われても、相手にはびきません。AIの登場により環境は一気に、しかも急激に変わりつつあります。過去の成功事例は何も使えないと考えられてしまいます。パターンや事例を示して考えてもらうのではなく、あくまでも「あなたはどうしたいか?」から始めることが重要なのではないでしょうか?
そして、自分の感情だから自分では100%理解できていると考えるのは誤解です。自分でもかなり意識しないと見えてこないことはたくさんあります。まずは自分が何を望み、何を恐れているかを明確にすることが大事です。
この記事を書いた人
木暮太一
(一社)教育コミュニケーション協会 代表理事・言語化コンサルタント・作家
14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない!」状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。
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